映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

『スターシップ トゥルーパーズ』を観た

1997年。ポール・バーホーベン監督。2024年に発売されたゲーム『ヘルダイバー2』が人気になり、そのゲームの演出がかなり『スターシップトゥルーパーズ』に似ていた(というかそのまんまな描写もある)。そのこともあり、俄かに本作『スターシップトゥルーパーズ』がネット配信の視聴数でランキングが上がるなどした。同じ理由で、私も思わずこの作品を見直してしまったわけだが、やはり大好きな映画。面白い。

本作は管理社会の怖さや不条理さを滑稽に描くことによって、反管理社会、反戦の映画としてのスタイルを取っているが、この作品の魅力は管理社会や権威への欲望や戦争の素朴なカッコ良さへの人々の憧れを実に気持ちよく映像化している点にある。きわめて反動的な映画として見るべきであると思う。本当にリベラルで民主的な価値観が素晴らしいと伝えたいのであれば、主人公のリコ、ズィム教官、ラズチャック隊長をあんな風に素敵に描くわけがない。もちろん、そういう欲望を観客に感じさせた上で、何かを反省させたいという意図もあるのかもしれないが、やはり本作が愛されるのは「戦争の英雄はカッコよく」「社会秩序を重んじる権威体制が揺るぎそうにない社会への憧憬」があるからだろう。むしろ、その人々の欲望から逃げないことこそが、ポール・バーホーベンの説得力なのだろうし、魅力なのだろうと思う。

『マクマレン兄弟』を観た

1995年。エドワード・バーンズ監督。本作がサンダンス映画祭でグランプリをとった時に1回目を見たのだが、その頃は結構面白かった。今見直してみて、面白いのだけど、随分とおぼこい物語のように思える。

クヨクヨと悩む若者の映画は多いが、この1995年という時代の、過渡期な感じの「男であることの悩み」のなんと素朴なことか。結婚したくない、子供作りたくない、深く女性を愛したくない。えらいどうでもいいことに悩むな、という感覚がする。分断前の世界の牧歌的なことよ。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』を観た

2023年。ジョン・フランシス・デイリー監督、 ジョナサン・ゴールドスタイン監督。良かった。全般的に安っぽいところはあるものの、ゲーム原作の映画としてはほぼ満点ではないかと思える。バルダーズゲートも出てくるし、数々の魔法は結構丁寧にゲーム原作の設定を踏襲させている(ように思える。自分のD&D知識が浅すぎてわからないが。)。

ただ、見終わって「ああそうですか。よかったね」とスンと萎むよう気持ちもある。この世界がどうしても馴染みのものに思えない違和感と言うか、いや、むしろどこを切り取っても「以前に見たことのある描写」でしかないことに対する感覚か。それこそ、D&Dが自分の育ってきたファンタジーフィクションのオリジンであることの証左なのかもしれないが、全編を通して意外性の全くない話であったようにも思う。『ゲームオブスローンズ』のドラマを見ている時にはそう思わなかったわけで、不思議なものだなと思う。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観た

2023年。古賀豪監督。面白かった。ただ、そこまで面白いかというと、個人的にはピンとこない感じもあった。確かに昭和の戦後間もないころの雰囲気など、とても興味深い描写があり、そこはとても楽しかった。しかし総じてちゃんと妖怪バトルアニメになっており、どこかチグハグな印象も感じた。タバコを所構わず吸いまくる昭和の男性を中心とした、とても身勝手な社会というものへの苛立ち、ヒロインの女の子や体を乗っ取られる男の子の悲惨さ、これらは凄く作品のキモとなる部分だし凄みも感じつつも、作品全体としてどこかしっくりこない感じもあった。逆に妖怪バトルアニメであろうとする姿勢には強い好感を抱いた。いわば「大人向け」なところよりも、「子供でも楽しめる」側面が手を抜いてない感じが、私としては「良い映画だったな」という感想につながっている。

あまりエグくならないように描くという方針などもあるだろうし(それでも色々踏み込んで描いてるとも思うが)作品としてとても難しいところを、綺麗にまとめているとは思う。図々しい感想だが、更にもう一回り大きくまとめきる力強さが欲しかったとも思ってしまう。正直言うと、鬼太郎の父親キャラがそこまで魅力的に思えなかった。単純に、ここが、この作品を楽しめなかった大きな要因なのかもしれない。

『劇場版 呪術廻戦0』を観た

2021年。朴性厚監督。面白かった。最初、TVの『呪術廻戦』は乗り切れない思いがして見ていなかったが、連続して見ていると楽しい。1期の東西対決のところあたりから、かなり面白く感じるようになってきた。

本作は前日譚というか、五条先生が若い頃の話だが、夏油が好きになれるお話だった。重要人物をサクサク殺していく展開というのも、一見単純なように見えて、色々と工夫があって面白いと思った。

『ゲットアウト』を観た

2017年。ジョーダン・ピール監督。なるほどー、こういう映画なんだね。前評判の高さなどから、どういう映画なのか(やや警戒心を抱きつつ)観たけれど、面白かったし、今風だなぁとつくづく思った。

白人女性が黒人の彼氏を自分の両親に紹介するという、ドタバタラブコメ的なノリと思いきや、がっつりと中盤からスリラーになっていく。しかし全体的にどこか軽いノリというのはあって、その硬軟織り交ぜた雰囲気は逆にソワソワする感じもある。

『ドントルックアップ』や『ナイブズアウト』の持つ軽やかさと共通するものがあると思う。それぞれ全然違う作品でありながら。落語っぽいというのか。なんかそんな感じ。

『狂い咲きサンダーロード』を観た

1980年。石井聰亙監督。時々見たくなる本作。なんだろうか、この良さ。ラストのアーマーに身を包んだ主人公のかっこよさ。泣きたくなるかっこよさ。

元リーダーで結局好きな女に逃げられるあの男のキャラクターが今回は気になってしまった。なんか不思議。すごく時間を割いて人物像が描かれるけど、暴力的なシーンにはほぼ出てこないし、妙にファンシーな加工がされた中で彼女とキャッキャウフフするという不思議な映像で語られる。他の殺伐したシーンとの対比で、妙に印象に残るものの、それがこの映画において大事な要素なのか、どこかよくわからない感じが面白い。