映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

機動戦士ガンダム 0083 ジオンの残光』を観た。

1992年。今西隆志監督。OVAの圧縮劇場版。綺麗にまとまっていると思うんだが、やはり駆け足という感じも。ニナの描き方なんかを今見ると、本当に古臭いというか、ニナの同僚が女性ばかりなのも、何をどう言う考えでああしているのか、聞いてみたい。上司である課長(?)は男のおじさんなんだよね、そういうところも今見ると面白い。

 

テカテカしているメカを見るのは、実に眼福。これを見たくて0083を見たくなることがある。カウボーイビバップもそうなんだけど、0083が見せるメカの光沢には、なんか夢が詰まっていると感じていた。

 

ニナが最後にガトーを助けるところは、子供心に強い印象を残した。もしかしたら、これが自分にとっての初めてのNTRストーリーだったのかもしれない。大人になった今、これを見ると「まあ、ケガしてるしな。助けるかもな」と思うが。

よくニナはガンダムシリーズの中でも悪女なんだと言われるが、ニナは本当にリアリティの欠けたキャラクターで、こんな現実感のない女を悪女として言ってしまうことの滑稽さがなんだか面白い。主題歌が聞けないのが寂しい。

『アメリカン・グラフィティ』を観た

1973年。ジョージ・ルーカス監督。好きだな、『アメリカングラフィティ』。なんだかピリッとしない映画ではあるんだけど、のらりくらりとこの世界に浸ってしまうし、それが心地いい。これが1970年代の空気(その時代に想像するベトナム戦争前の空気?)だった、のかどうかはよく分からないのだけど、それでもなんだか若者らしいモラトリアム感がすごく馴染みのあるものに感じる。まあよくは分からんのだけど。

あれだけの人物をそこまで濃い描き方をしないのに、「こいつはこういう奴なんだろうな」と想像させるところは凄いのかもしれない。『スターウォーズ』とかもその魅力であれだけ魅力的に見えている、みたいなところがありそう。

『黄金』を観た

1948年。ジョン・ヒューストン監督。最後まで痛快で、実に楽しい。金を入手した男が、どんどんと狂気に染まっていくわけだが、決してフリークス的な狂気ではなく、日常や常識や合理性と地続きの狂気という感じで描かれるところが良かった。

 

ハンフリー・ボガード演じる主人公のドブズ。彼は最初は物乞いのように金をせびる哀れな貧しい男であり、見ている者にも同情を買うような存在である。にも関わらず、後半、どんどんと欲深くなっていき狂気の人となる。しかしこの人間も、最初は観客も「同類や仲間」と思っていた人間であり、この記憶が観客にラストの悲劇を、自分事として捉えさせるようなところがある。

最後に黄金を手に入れられない結末に至るのに、この爽やかさ。この爽やかさは僅かに感じるドブズと自分に共通して潜む罪悪感を洗い流してくれるものとして、より気持ちよく感じるのかもしれない。名作だった。

『男はつらいよ 望郷編』を観た

1970年。山田洋次監督。シリーズ第五作目。シリーズの定番が全部詰まったような作品。ヤクザ者の親分が息子に会いたがるのも、会えずに死んでしまうのも、あっさりしてて良い。そして寅さんの苦悩もまたあっさりしている。寅を振る節子の振る舞いも実にあっさりしていて、ある意味残酷で良い。寅のどうしようもなさを、どこまでもそのままに描くというのは、本当に面白い。寅さんのどうしようもなさを評価仕切った先にある、無評価の境地というか。寅さんを許すことができるあの人たちを単に家族と呼ぶのは違うような気さえする。もっと尊いもののようにも思う。面白い。

『はてしない物語』を読んだ

ミヒャエル・エンデ著。日本語訳は上田真而子佐藤真理子。1979年刊。日本での初版は1982年。 

 

素晴らしかった。とにかくもう最高だった。これは俺だと読みながら叫んだ読者はどれだけいるだろう。本を読むことをここまで勇気づけるというのは、どういうことなんだろう。全てが美しく、その全てが、こんなにも優しく語ってくれてしまったら、もう何もいらないような気がしてしまう。

『ヒルビリーエレジー 郷愁の哀歌』を観た

2020年。ロン・ハワード監督。ちゃんと面白かった。面白かったし、よくもできているんだけど、どこか物足りないと言うか、しかしこの物足りなさこそがこの作品の良さなんではないかとも思う。これ以上、社会の構造的問題を明確に描こうとすると、監督の手に余るからなのか、映画の尺として収まらないからなのか、理由は分からないが、うまくいかないような気がする。

 

主人公の彼女のかわいさが救いになっている。それはとても映画的だし、ベタだし、迎合的かもしれないが、良い。お母さんのオカシサもささやかな描き方。『マイライフアズアドッグ』のお母さんとかとは違って、かなりシリアスな状況なのに、どこかカジュアル。しかしこれが今風とも思う。

 

話題の原作の映画化としては、色々と小さくまとまってしまった印象があるものの、よくできた作品ではないかと思う。

『クイーンズギャンビット』を観た

2020年。スコット・フランク監督。Netflixオリジナルシリーズの全7話の連続ドラマ。面白かった。とにかく丁寧に作られている。個人的に素晴らしいと思ったのは養母と主人公との関係の描き方。お互いを尊重しながら、かと言って近づきすぎず、探り合いながらも、言わば戦友として、ビジネスパートナーとしての関係を築いていく。これは「血のつながらない家族が本当の家族のように」というありがちな物語に回収されない描かれ方で、とても面白かった。「本当」とかどうでもいいというか、そこにあるゴツゴツした事実の塊に毅然として立ち向かい続けた主人公の姿をカッコよくする素晴らしいバックグラウンド描写になっていると感じた。

 

ラストの少年マンガ的熱血展開はとてもいい。分かりやすく、楽しいのはさることながら、友情というほど湿ってはいない関係が逆にアツい。この作品が実にエンタメ作品なんだなと改めて思い起こさせる展開だったと思う。

 

めちゃくちゃ心に残る作品というわけではないけど、素晴らしいその品質に感激した。