映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

映画

『濱口竜介 ロングインタビュー その軌跡と奇跡』を観た

2022年。日本映画専門チャンネルにて。濱口竜介の語る言葉は、とても明晰だ。秘密を抱えるような言葉を選ばないようにしているというか。そして、適切で、納得のいく絵を撮ることを、規則のルールを守ることのように淡々と語る。そういう言葉には、どこか共…

『モンソーのパン屋の女の子』を観た

1962年。エリック・ロメール監督。「六つの教訓話」シリーズの第1作目。23分の短編。本当に好きな女に会えないツラ当てに、好きでもないパン屋の娘を誘惑する話。実にひどくてコミカル。 どこかブラックなオチだが、やはりスコーンとした朗らかさもある。ロ…

『獅子座』を観た

1959年。エリック・ロメール監督。叔母の莫大な遺産が手に入ると聞いた男の堕落と再生の物語。ラストなどはいかにもロメールらしい展開。どこか突き抜けた楽天性と、全編にそこはかとなく宿る冷たい視線。 主人公の落ちぶれていく様が目を引くのはもちろんだ…

『かがみの孤城』を観た

2022年。原恵一監督。原監督の映画は、2002年の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』以来だろうか。面白かった。普通といえば普通の映画だと思うが、それでもちゃんと抑制が効いていて楽しめる。原作は未読だが、怒涛の伏線回収がすごい!…

『偶然と想像』を観た

2021年。濱口竜介監督。面白かった。オリジナルでこんなに面白い脚本ができてしまうのだから、なんともすごい。3話とも面白かったのだけど、最終話はとても素敵で、濱口映画としては『親密さ(2012)』に近い、人の生き方を肯定する物語だった印象を受けた。…

『RRR』を観た

2022年。S.S.ラージャマウリ監督。最高に面白かった。正直、観に行く前までは、やや疑わしい気持ちが強かった。『バーフバリ1&2』は1がやや低速で始まる感じがあるが、2は大好きだ。だが、それでも『バーフバリ1&2』をいろんな人に薦めたいかというと、そう…

『翔んだカップル オリジナル版』を観た

1983年。相米慎二監督。前半は「80年代滅ぶべし」みたいな気持ちで見ていたが、勇介が実家から帰ってくる辺りの後半から「この映画いいわ……」という気持ちで見ていた。とても面白かった。今見ると、勇介の振る舞いがあまりにもあり得なくて、見ててビックリ…

『サイバーパンク : エッジランナーズ』を観た

2022年。今石洋之監督。Netflixアニメシリーズ。(アニメーションではなく)アニメという言葉はNetflixによって更に世界に普及することになったんだろうか。最終話の「Netflixアニメシリーズ」というテキストが出てくる時に、今更ながらそんなことを考えてい…

『漁港の肉子ちゃん』を観た

2021年。渡辺歩監督。前日に見たのが、『さかなのこ』と『竜とそばかすの姫』だったので、色々なものが混ざり合った気持ちになった。本作は、とても素敵な作品だったと思う。主人公の実の母親を死なせたりせず、ちゃんと生きているという設定にしたのは素晴…

『竜とそばかすの姫』を観た

2021年。細田守監督。非常につまらなかったが、『未来のミライ』よりは楽しく見れた。でも、正直、よく分からない話だった。どうも細田作品に宿る軽さというものが苦手で「なぜそれをそういう軽さで描けるの?」と思ってしまう。母親の死、児童虐待、ネット…

『無法松の一生』を観た

1943年。稲垣浩監督。中盤の運動会のシーンでは思わず泣いてしまった。素晴らしかった。なんというか、なんでもない映画であるようにも思うのだけど、これぞ、これぞ、とも思う。阪東妻三郎の愛らしさ。撮影は宮川一夫。車の屋根と持ち手とが構成する斜線の…

『気狂いピエロ』を観た

1965年。ジャン・リュック・ゴダール監督。高校生の頃に、初めてこの映画を見たとき、かなり鮮烈な印象を受けた。あれから随分と時間が経ったが、あの頃と近い気持ちで見れてしまうところがすごいのかもしれない。 昔よりも、ずっとそれぞれのシーンの意味を…

『ジャスティス・リーグ(ザック・スナイダーカット)』を観た

2021年。ザック・スナイダー監督。ジョス・ウェドン版の『ジャスティスリーグ』は見ていたのだが、全然内容を覚えていなくて、新鮮な気持ちで楽しめた。ジョス版は「スナイダーっぽさもあるけど、あんまり面白くないなぁ」という感想だったけど、こちらの4時…

『幌馬車』を観た

1950年。ジョン・フォード監督。いやぁ、最高に素晴らしかった。最後は泣きそうだった。なんだろうな、この良さ。モルモン教徒が約束の地を目指して西に向かう。その幌馬車隊を率いるベン・ジョンソン。モルモン教徒、旅芸人、モグリの医者。彼らはみんな嫌…

『アウトレイジ』を観た

2010年。北野武監督。『日本統一1』を見たせいか、久しぶりに見たくなってしまい、ついつい『アウトレイジ』を見てしまった。ラストの全員殺すエンドは毎回北野映画で笑ってしまうところだが、やはり今回も笑ってしまった。なんでそんなに全員殺すのか。この…

『日本統一1』を観た

2013年。山本芳久監督。なんとなく長寿シリーズということで噂には聞いていたが、なかなか見る機会がなかった。今回、第1話を初めて見た。意外に面白くて、いい意味で驚いた。2022年9月には『日本統一53』がリリースされる予定であり、もはや10年近い老舗ブ…

『アパッチ砦』を観た

1948年。ジョン・フォード監督。素晴らしかった。ヘンリー・フォンダ演じるサーズディ中佐が、とにかく愛されにくいキャラであり、それゆえ、この物語がどう終着するのか不安なまま、ラストの30分に突入していく。インディアンを騙し、彼らを不当に殺すこと…

『リバティ・バランスを撃った男』を観た

1962年。ジョン・フォード監督。大変面白かった。テーマも、暴力の蔓延る西部において、活字と法による秩序を求める人間のドラマという、実に好ましいテーマで熱い。 法律や制度によって裁けない悪があることによって、弁護士である主人公(ジェームズ・スチ…

『グラートベック人質事件 : メディアが越えた一線』を観た

2022年。フォルカー・ハイゼ監督。見る前の印象と見た後の印象が、結構違う作品だった。「メディアが越えた一線」という副題を見ると「マスコミの報道の仕方が酷くて、それを告発するドキュメンタリーなんだろうな」と想像してしまう。しかし、実際見てみる…

『黄色いリボン』を観た

1949年。ジョン・フォード監督。退役を間近に控えた騎兵隊の大尉の、最後のミッションとその苦闘を描く。 宮崎駿の『ルパン三世 カリオストロの城』のラストで、庭師の老人の「なんて気持ちのいい連中だろう」というセリフがある。主人公のルパンたちを言い…

『トップガン マーヴェリック』を観た

2022年。ジョセフ・コシンスキー監督。面白かった。途中、中だるみした感じはあったが、終盤の流れが実に見事で素晴らしい見応えになったと思う。 前作の『トップガン』(1986年)を見てから3時間後ぐらいに本作を見たため、「おー!あれ!あの場面、おー!…

『トップガン』を観た

1986年。トニー・スコット監督。数年前に「トップガン、見たことないから、見とくか……」と思ってなんとなく見始めて、30分くらいで、見るのをやめてしまった。特につまらなかったというわけでもなく、なんかソファを離れて、そのまま見るのを忘れてしまった…

『逃亡者』を観た

1947年。ジョン・フォード監督。「逃亡者」と聞くと1963年のアメリカのドラマ、医師リチャード・キンブルが無実の罪から逃げる作品を思い起こすが(と言っても私はそのドラマ、1話も見たことなく、ハリソン・フォード主演の1993年のリメイク版の映画しか見た…

『きみの鳥はうたえる』を観た

2018年。三宅唱監督。いや、予想以上に面白かった。男2人に女1人の恋愛劇。ロメールともトリュフォーとも違う、もちろん濱口竜介とも違う、独特の空気感。三宅唱のリアリズムというのが、本当のところ、私自身分かっていない。どうも自分の生きてきた世界観…

『三人の名付け親』を観た

1948年。ジョン・フォード監督。ひょんなことから生まれたばかりの赤ん坊の面倒を見ることになったならず者三人組の逃亡と帰還の物語。 コミカルなのに、どこか気高い。銀行強盗を行うような悪人でありながら、どこか憎めない主人公たち。こんな牧歌的な話が…

『バブル』を観た

2022年。荒木哲郎監督。あまりに評判が悪いので逆に興味を惹かれ見てしまった。まあ、そんなに面白くないけど、普通のアニメじゃない?って感じがする。作画の良さというのはあまり分からなかった。背景美術がテカテカキラキラゴツゴツしてたとは思った。し…

『スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を観た

2021年。ジェームズ・ガン監督。面白かった。2016年の『スーサイド・スクワッド』(デヴィッド・エアー監督)がえらく評判が悪く、次はジェームズ・ガンが登板すると聞いて、余計に期待が高まった。そんな風に期待していたにも関わらず、結局、見るまでに一…

『天井桟敷の人々』を観た

1945年。マルセル・カルネ監督。妖艶な美しさを持つガランスを中心に、繊細で内向的な無言劇役者バチスト、豪胆で女好きの役者ルメートル、世を厭う詩人で犯罪者ラスネールの3人の男たちの生き方とロマンスが巡る物語。 序盤のバチストによるパントマイムで…

『新・男はつらいよ(4作目)』を観た

1970年。小林俊一監督。面白かった。競馬での大当たりから、ハワイ旅行、泥棒騒動、一家あげての大喧嘩、寅さんの一目惚れ、破局、と結局最後はいつもの寅さんの物語になっていくのだが、前半と後半の繋ぎの部分が非常に見事だと思った。ハワイ旅行騒動で出…

『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』を観た

2015年。レミ・シャイエ監督。祖父の意志をついで、北極点を目指す少女の物語。いやぁ、素晴らしかった。みんなが素晴らしいと言っていた意味がよく分かった。 主人公が危機に陥った時の、リカバリのエピソードが実に良くできている。こんな危機をどうやって…