映画と映像とテクストと

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『ジャンヌ・ダルク裁判』を観た

1962年、ロベール・ブレッソン監督。ブレッソンの映画を見ると、そして本作でも、ついつい僕は「面白い」という感想を述べてしまうのだけど、やはり、そのあまりに軽薄な「面白い」という感想にどこか罪悪感のようなものも感じる。ボキャブラリーと作品を鑑賞するための教養が自分になくて、もどかしい気持ちを持ちつつ、しかしそれでもやはりこの「面白い」がブレッソンの映画のキモなのだと、どこかで図々しく思ってもいる。

 

淡白でスペクタクルのない『ジャンヌ・ダルク裁判』のこのあまりの素っ気なさは、他のブレッソン映画で感じる出演者たちの「モデル」らしさが、濃すぎるほどに抽出されている。すべてが神の啓示や意思に導かれた人形のようで、しかし終盤、これまでの主張を翻し、突如として教会の訓戒を受け入れるジャンヌも描かれる。この部分が唯一の本作のドラマ性とも言える部分だと思うが、さりとてその場面でさえ、決して人間的というか感情的な何かというのでもなく、神経を伝達する化学物質による生存本能に少しばかりいたずらされたに過ぎないようなモノらしさがある。

 

マヌケな物言いでしかないのだが、やはり「面白い」とついつい言ってしまう。面白い。