映画と映像とテクストと

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『君の名は。』を観た

劇場で見て以来、久しぶりに新海誠監督の『君の名は。』をテレビで見た。非常に気持ちの悪い映画だし、その気持ちの悪さの堂々たるところこそ、この映画の見どころだと思っているけれど、劇場公開から数年経ち、こんなにもネットで多くの人から「気持ち悪い、気持ち悪い」と言われるようになるとは正直思っていなかった。

 

皮肉ではなく、この映画の気持ちの悪いところが僕はちょっと好きなんだけど、やっぱりこの映画、あまり賢くなさそうなところが苦手だ。震災というとてつもない経験をしてしまうと、濱口竜介の映画を見ても、クドカンの『あまちゃん』を見てもそうだが「そのくらいのことは考えちゃうよねー」というところが出るものだと思うのだけど、『君の名は。』にはそういう賢しらなところが一切ない。そこはやはり苦手だなと思う。

 

あと、改めて見てみて、年上の女との絡みという部分が非常に新海誠らしさだなと思った。何かこう、年上女性が年下男性にもたらすものに「分かりやすく特殊な何か」をずっと担わせようとしている気がする。それがこう、人生の機微であるかのような何かを。『秒速五センチメートル』の出会うべき二人が出会わない、というのも、全てそういうノーマル(もしくはその正反転)なんだという、逆にノーマルさへの執着があるように思える。それは例えるなら童貞のことをフツーに「気の毒な人だ」と思ってそうな感覚というか*1

 

新海誠は素朴に保守的な人なんだろうなと思う。

 

 

*1:一部の世評として新海誠作品を童貞くさいとみなしたのはある意味それなのではないかと思っている