映画と映像とテクストと

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『仁義』を観た

ジャン=ピエール・メルヴィル監督の1970年の映画。前半の複数のストーリーラインとキャラクターが後半どんどんと集約していく。しかし全体として小綺麗にまとまるだけではなくて、それぞれが尖ったかっこよさで存在感を放つ。

 

見れば見るほど、酔える映画ではないかと思う。コーレイ(アラン・ドロン)の美しさもさることながら、登場人物のどの男たちもエロくカッコいい。裏切られ、敗者となる男たちの美学が隅々にまで行き渡っている。宝飾店強盗をする時のコーレイとボジェルの助け合う姿のなんと痺れることか。

 

後半の強盗シーンも見応えあるのだが、個人的には前半が好きだ。どのキャラクターも必要以上に喋らない。しかし伝わってくる。どのシーンも観客に裏があると思わせるのではなく、見たままを伝えようとしているようだ。映画の持つ誠実さを感じさせる。車のトランクから出てきてピストルで脅すボジェルにコーレイがタバコを渡すシーン。二人の男の仲が急速に発展していくその清涼な様が実に心地いい。

 

ラスト、邦題タイトルにもある「仁義」という言葉が出てくる翻訳がしばらくなされていたようだ。今回自分がBSで見たバージョンは原語の言い回しに近い感じかと思われる。(故買商に扮するマテイ警視とボジェルとのやりとり)なんとなくだが、仁義という言葉では言い過ぎな翻訳と思える。

 

参考記事

『仁義』 - LE CERCLE ROUGE