映画と映像とテクストと

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『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』を観た

2019年、ジョン・ワッツ監督作品。面白かった。前作に引き続き、前半の青春モノとしての穏やかな進行がとても良い引きとなって、後半のアメコミ的な展開への気持ちの昂りを高める。ロケーションもコロコロと変わるが散漫な印象はなく、物語の展開も適度にキャッチーで見ていて飽きない。ところどころ不可思議な展開*1があるが、個人的には許せてしまう範囲だった。とても面白い作品だと思った。

 

本作では、日本のアニメでも時々見られるような「弱気になる主人公」という展開があるのだが、その流れが非常に自然で見事だと感じた。世界の危機にどこか無関心であるピーター・パーカーだけれど、衝動的に自分勝手であるのでもないし、逆に妙に正義を志向するのでもない。いじけているにしても、なんだか空回りしている印象(シンジとかアムロとかに見られたアレ)を受けなかった。やはりその直前のところで結構マジメに闘っていたし、戦いにおいて「活躍できなかった」という素朴な(ある意味男子高校生らしい)悩みであるところが、観客として素直に受け止めやすかったと思う。「戦う事自体に葛藤する」みたいな抽象的な悩みは、やはりどこか距離を感じて白々しくなってしまうが、その点、ピーターの悩み方はとても具体的で良かった。

 

あと、大人があまり叱ったりしないところも、良いと思った。先の例でも挙げたエヴァの碇司令やガンダムブライト艦長もちょっと肩に力入りすぎて、少し子供っぽく見えてしまう。その点、ニック・フューリーもミステリオもまぁまぁ大人でよかった。青春テーマの作品では、大人をいかにして大人として描くのか、というのは重要だなぁと改めて感じた次第。

 

しかしジョン・ワッツ監督は前作に引き続き見事な作品を作り上げたわけで、これは次回作も期待だなと思った。今から楽しみだ。

*1:帰国するはずなのに、サラッとロンドン行きを先生も生徒も受け入れているところとか、最後の戦いの場所に戦闘後なぜMJだけ来るのか?とか色々気になるところはある