映画と映像とテキストと

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『幸福(しあわせ)』を観た

1964年。アニエス・ヴァルダ監督作品。恐ろしい映画だとは聞いていたが、まったくもって後味の悪いすごい映画だった。何がクソなのか分からなくなるほどに、色んな価値観を揺さぶってくる。初めてヴァルダ作品を見たけど、すごく良かった。

 

主人公の職場での同僚たちの振る舞いが印象に残った。彼らは実に普通だ。おそらく善良だし、やさしさも持っているだろう。しかし彼らの生活もまた、その裏側をそっと覗き込めば底の見えない深淵に接しているのではないかと、つい想像してしまう。何かの強烈な悪があるのではないところに、日常生活が形の見えない権力的なものによって知らず知らず支配されているということを逆説的に暴くようなところが、とにかく面白かった。

 

そして子供たちの無邪気なこと。ここが特に残酷に感じた。新しい義母に早々に慣れてしまう恐ろしさもさることながら、やはり映画前半に描かれる子供たちのかわいさ、これが何より怖い。このかわいさとこの映画の残酷さはまったく地続きだとしか思えない。それが怖い。

 

あと、街並みと建築物の画が素晴らしかった。オープニングは特にキャッチーだが、とにかくどのシーンも本当に美しい。この見ることの快感自体もまた本作のテーマに回収されていくような気持ちになるところも凄いと思った。