映画と映像とテクストと

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『万引き家族』を観た

2018年。是枝裕和監督。家族の映画、日本社会と貧困の映画、そういうイメージを持っていたので、実際に見てみるとそういう事前のイメージとかなり違うタイプの映画だなと思った。したたかに、しかし物哀しく生きる人間の映画であった。

 

とても分かりやすい映画ではあるけれど、劇中の家族構成の入り組んだ複雑さなど、適度に鑑賞の難度もあったりして、そういうところが受けたのかなと思わなくもない。また、主人公の家族が見せる「リアリティ」には、キャッチーさもある。

 

ただ、こうした仕掛けや「リアリティ」が、一体どういうことを伝えたいのか、自分には少し分からなかった。個々の動作やセリフに、抑制の効いた「リアリティ」があるような気はするのだけど、そうした「リアリティ」がバラバラに思えた。この映画を「メッセージ性の強い映画」だと捉える感想をネットで見かけて、正直、驚いた。自分にはこの映画がとてもメッセージ性のない映画だと思えたからだ。別にメッセージがなくてもあってもいいのだが、メッセージ性のない映画だと考えると、ひどく平板でベタな映画に思える(もちろんメッセージ性がないから平板でベタだと言いたいのではない)。同じタイミングでカンヌに出ていた『寝ても覚めても』と比べてしまうと、かなり劣るようにも思えてしまう。逆にメッセージをかなり強く込めたのだとしたら、それを上手く伝えられていないような気がする。なんとなく「考えさせられたり」「議論を呼びそう」なモチーフに満ちているけど、それに留まっているように思える。

 

それなりに面白い映画ではあると思うのだけど、なんだか自分にはとても中途半端で退屈な映画でもあった。