映画と映像とテクストと

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『恐怖の報酬』を観た

1953年。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督。あまりに面白くてびっくりしてしまった。特に前半の主要な登場人物が次々と紹介されていく序盤の面白さに驚いた。なんということはない地味な部分なのに、退屈しない。各シーンが持つ適切感がすごい。特に、昔は悪いこともやったであろう石油会社の社長が良い重しになっている。危険な任務に就くドライバーを安く買い叩こうとする会社の経営幹部に「お前は分かってない」とその社長が詰るシーンは、この映画の持つ説得力の一端を示しているように思う。

 

さて、ようやく危険な運搬ミッションが始まってから、なまこ板のくだりまでは、意外に大人しい。ただ、元ギャングのジョーの時折見せる気弱さが、物語の先行き不安さを暗示していて面白い。ところで、なまこ板の道はなんでスピードが速い方が安定するのか今ひとつ分からない感じだった。ただ、その後から怒涛の展開が続く。トラックのタイヤが大写しになる緊張感たるや、気持ち良くてしょうがなかった。

 

娯楽としてさっぱりと楽しませる部分(ルイジが爆弾の火を止めに行って、死ぬかと思いきや実は生きてましたのシーンなど〕と、トコトンまで人間の複雑さに付き添うようなドラマ(ジョーの怯えを丁寧に描き、最後はマリオに共感までさせる流れとか)を見せるところの、両方が味わえるところが実にいい。贅沢という感じがする。

 

とにかく面白かった。参った。