1990年。ジョエル・コーエン監督。最初に見た時に、コーエン兄弟作品の中でも、どこか素直に「いい!」と言い切れないような悶々としたものを感じたのだけど、すごく好きだと思う部分もあったりして、自分にとって不思議な立ち位置の映画だった。今回久しぶりに見直してみると、予想以上に淡白な印象で、これは全てガブリエル・バーンの顔がそう思わせているのではないかと思った。
コーエン兄弟は、深そうでいて、その深さがなんなのかよく分からないという魅力を持っていると思っていて、その手管が最大限にまで発揮されているのが本作かもしれない。一番好きだという人がいるのも分かるような気がする。
ただ、そういう意味ではやはり『ファーゴ』の方が、作品としては見事だよなと思う。『ミラーズクロッシング』はその淡白さがどうもコーエン兄弟の裏表のなさを暴露してしまっているような印象を受ける。部分的には好きなんだけどな。