1968年。セルジオ・レオーネ監督。引き伸ばされたカットに食い入るように見続ける。その若干大げさとも言える緊張感に、共犯関係を結ぶように参加する。アップした顔の造作の猥雑さからも目が離せない。これもまた映画の力なんだと感じずにはいられない。面白かった。165分の長丁場は、見ることの快感に酔った時間だった。
クラウディア・カルディナーレへの男たちの振る舞いや姿勢が実に面白い。ヘンリー・フォンダは子供を殺すことさえ躊躇わない悪役だが、あのクラウディアとのベットシーンでその人物像に愛嬌が生まれる。話の筋やキャラクターはとても分かりやすく、単純なようでありながら、細部で観客の予想を小さく裏切る。逆張りを逆張りとして自覚し、限りなく逆張りを美しく生きるえぐみが、クセになる。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』とセットで見ることで、色々と楽しめる部分も多いだろう。出てくる男たちも女たちも、ほとんど言い訳をしない生き方をしている気持ちよさがある。時代と折り合いをつけながら生きるというのは、良いとか悪いとか"したたか"だとかそんなものじゃないんだよと告げられているような気がしてくる。生きることのリテラルさというか、剥き出しの生き様は、他者からの評価を拒絶する強さを持っていることを見せつけられる。
ラストになってようやくタイトルが出てくるというその演出は、『ワンハリ』と『ウエスタン』とで、それぞれ少し趣が異なっているようにも思えた。ただ、どちらもそれぞれに素晴らしい御伽話だったと思う。