映画と映像とテクストと

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『スパイ』を観た

1957年。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督。精神病院が舞台のスパイをモチーフにした映画、と聞けば非常に期待も高まるというものだが、サスペンスや哲学的な問いが推し進められるような作品ではなく、どこかコミカルで、不思議な感触の映画だった。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督作品のブルーレイBOXを購入し、3本目にこういう作品が入っているとはなかなか意外だった。正直、面白いかというと、最後まであまり面白くなくて「自分の理解が足らなさ過ぎかな」と不安になったが、リーフレット遠山純生氏の解説(「クルーゾーはもともとカフカの『審判』を映画にしようと企てていたが、...」)を読んで、少し腑におちる感じがした。

 

ただ、やはり、不条理劇としてもどこか退屈な感じがある。この作品以降のクルーゾー映画は実験的なものが多くなるようなので、そういう意味では興味深い位置づけにある作品なのかもしれない。また面白いと思った点としては、前半部分の何の説明もなく登場人物が追加されていくあたりの不気味さがある。あのあたりの不安感というのは個人的に非常に好みでもあった。