映画と映像とテクストと

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『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』を観た

2019年。まんきゅう監督。ネットでの前評判が異様に高かったが、確かに悪くなかった。作品の芯に「別物は別物。安易に「同じ」としない態度」があり、そこが好みであった。ささきゆうすけさんの以下のツイートが、本作の素晴らしさを的確に語ってくれている。

https://twitter.com/sasakiyusuke/status/1193352815776653312

 

「同じ立場の仲間であること」で解決とする作品が世には多い中で、本作は差異のある立場を前提にした上で解決を描いている。ザック・スナイダー的映画であった。

 

ただ、見どころは主に最後のオチの部分で、それ以外の部分でそんなに楽しめるところは、あまりなかった。自分が子供アニメに詳しくないためかもしれない。

 

ところで、場面転換において、毎回「偶然当たった」とか「偶然押した」とか「偶然そこにいた」みたいな方法で繋いでいたところは面白いと思った。最初は「都合いいなぁ(ほんわか)」ぐらいに思っていたが、ひたすら「偶然」で物語を繋いでいるのを見るにつけ、これはかなり意図的なのかなと感じるようになった。だとするとその制作者の意識のありようがちょっと面白いなと思った。

 

あと細かい話だが、『アラビアンナイト』の世界で主人公を「インドの王子様」と言っていた箇所があり、「『アラブの王子様』の方が正しいのでは?」と思った。しかしここのWikipedia*1の記載を読むと「インドの王子様」で正しいのかもしれないと思った。どうなんだろう。あそこの絵本の世界だけ原作が何かはあまり明示されていないが、少なくともアラジンやシンドバットではないだろう(2人とも王子様ではないので)。ちなみにこれは作品の中に出てきたモチーフ(開け、ゴマ)だがアリババも王子様ではない。と、考えると「インドの王子様」というのは、魔法の絨毯が出てくる原作の千夜一夜物語のお話の設定に意外に忠実なのではないかと思った。

 

*1:Magic carpet - Wikipedia。ここに"Sultan of the Indiesの息子"とある。