映画と映像とテクストと

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『スターウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』を観た

2019年。J.J.エイブラムス監督。いやいや面白かった。前作のエピソード8が良かっただけに、不安なJ.Jの再登板であったが、良かったと思った。

 

本作にはとても現代的なためらいを感じて、そこがとても良かった。血統を中心としたスターウォーズサーガに明確な反旗を翻した前作(EP8)を受けて、そのコンセプトをどのように調理しようか戸惑っている、その姿勢にこそ共感する。レイの出生の秘密も、なんだかテキトーに付け加えているように見えるが、それで良いと思った。

 

本作の話の流れにはご都合主義と無理矢理が満ちているが、そうした拙速さこそがとても神話っぽいと感じた。ギリシャ神話の神々が、気まぐれで突発的に人を殺したり、愛したり、嫉妬したり、そういう理知的な人間の意思とは違う道理で動いている群像劇こそ、今描くべき現代の神話という感じがする。個人的にはエピソード8が素晴らしいと思ったし、その路線を継続してスターウォーズに大きな変革をもたらす方向性も少し期待していたが、それでもこうした大団円をEP9で描いたことはとても良かったと思う。

 

ラスト、レイが戦闘機で戻ってきて、大勢の仲間たちから拍手と喝采で迎えられる、そんなシーンが期待される中で、彼女は一切みんなから祭り上げられることなく、ただフィンとポーの3人だけで抱き合い、喜び合う。エピソード4とは違うラストを描いたJ.J.は頑張ったなと思った。そのためらいこそが、今の時代の希望だと思う。