映画と映像とテキストと

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『男はつらいよ フーテンの寅(3作目)』を観た

1970年。森崎東監督。さくらの登場シーンは少ないけれど、どのシーンのさくらも涙をさそう。柴又から立ち去ろうとする寅さんに「もともとはお兄ちゃんの縁談だったんだもんね。良いお嫁さんに出会えるかもって思ったんだよね」と優しく声をかける。そしてラストシーン、テレビに映った寅さんの醜態を見て、涙するさくら。その優しさはほとんどこの世のものとも思えないほど。理不尽すぎる兄弟愛がすごい。

 

寅さんは言葉の人なんだとつくづく思う。寅さんの「エセインテリ!」のような言葉には、なんだか妙な迫力がある。その言葉が同じテキ屋の酔いどれ親父に向かうシーンが実に素晴らしい。その娘に父親の言葉を通訳する寅さんは、これまでもずっと翻訳者だったんだと思い知る。そして名乗り口上の心地よさ。そこには意味はなくて、ただただリズムと様式だけがある。その空虚さこそ、寅さんが、与えてくれるものだと思う。中身がないということの美しさが寅さんにはある。