映画と映像とテキストと

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『ウォッチメン (アルティメット・カット版)』を観た

2009年。ザック・スナイダー監督。213分という長さ。しかし面白い。やはり最高だわ。原作もまあもちろん面白いんだけど、映画版は現代的にちゃんとアップデートされていると思う。「共通の敵を作る事で米ソが仲良くなる」というラストの企みも、原作が当時(1987年)持っていたであろう迫真性は、2010年代の今やどこか牧歌的に見えてしまう素朴さがある。原作を逸脱しないままに、その素朴さを回避することはなかなかできないが、ダニエルに「お前は人類を歪な姿に変えてしまったんだ」と言わせてエイドリアンを殴らせるところは、ザック・スナイダーが単なるネオリベに堕さない何者かであることを示しているように思う。ザック・スナイダーの作品は単純なものに見られがちだけど、やはり現代的な複雑さというものを抱えていると私などは感じてしまう。

 

黒い海賊船のアニメはとても良いと思った。原作では善と悪の境目が分からなくなることの象徴として挿入されていたのだろうが、それを映画では「意味不明だ」と黒人少年に言わせているところが面白い。そう、今や善と悪の境目がよく分からないと語ること自体が意味不明になってきている。そう語ることの虚しさ、しかしその正しさから一体どこに進んで良いか分からないという、ややメタ的な八方塞がりのような状態。ザックの現代社会への視線がよく分かるエピソードとして使われているように思う。