映画と映像とテキストと

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『グエムル 〜漢江の怪物〜』を観た。

2006年。ポン・ジュノ監督。比較的淡々と物語が進み、そこまで面白い映画ではなかったけれど、時折ハッとするような美しい絵が出てきてドキッとする。特にラストシーンは素晴らしかった。

 

物語の序盤から怪物の姿全体を画面に晒すところなどはJ.J.エイブラムスの『クローバーフィールド』を思い出した。怪物の姿を出し惜しみしないという姿勢が、人間と怪物の立場をフラット化する。かと言って怪物が人間と繋がるなんてことは一切なくて、本当に迷惑で面倒な害獣に過ぎない。この全くコミニュケーションを取れない怪物と人間を同じ地平で描くことに不思議と共感してしまうところがある。怪物が象徴するであろう多くの社会問題は当然ながら全て当事者の問題であるのに、それらの過酷さが自然災害のようにどうしようもないものとして重くのしかかる。当事者なのに、どこか冷めて事態を見てしまうような、そうした感情を失ったような眼差しを本作からは感じた。

 

家族の物語として考えると、主役のカンドゥがとても視聴者の共感を得るところから遠いキャラクターであることが面白かった。怠け者で間抜けで特に何の能力もない。弟や妹に比べても無能な存在。そしてその事を親もよく分かっている。兄妹たちに「あまりカンドゥを馬鹿にするな」と諭す場面が素晴らしい。無能な存在が怪物をやっつけるというストーリーラインはとても素朴で単純なようにも思えるけれど、実際に鑑賞するとそういう清々しさとは違う、どこか濁ったような感情にもさせられる。無能な人間が不必要な人間として扱われて良いのか?という問題意識を感じる。それは社会批判や風刺という側面は確かにあるとしても、決して高度にインテリジェンスに問題に立ち向かうというよりは、そうしたものへの「気分」をものすごく的確に表現しているように思われる。もう少し、自分が韓国社会に明るければ、また違った感想を抱きそうな気がする。