映画と映像とテクストと

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『パラサイト 半地下の家族』を観た

2020年。ポン・ジュノ監督。素晴らしかった。面白かった。同監督の他作品では『グエムル』しか観ていなかったし、『グエムル』もそこまでおもろかった印象はなかったので、本作は期待以上に楽しかった。

 

展開の面白さとテンポの良さなど、作劇に対する評価はおそらくどんな人にとっても高いだろうと思われる。一方で「話は面白いけど、そこまでの作品でもないよね」という評価が結構あることは興味深い。たしかにそう言いたくなるところがある。素朴に言えば、エンタメに寄りすぎてるという感じだろうか。ただ、細かなドラマの部分としても面白味が随所にあった。例えば、ソン・ガンホがパク社長に「奥様を愛してるんですね」と何回も言うところが大変面白かった。インディアンの格好をして、雇い主である社長の息子のパーティーで余興をやらせられる。そんな状況で「社長も大変ですね。奥さんを愛してるんですね」と言われることの圧倒的な嫌さ。嫌味なのかどうかさえ分からない、そんな下層の人間が発する言葉から滲み出る図々しさは、正に格差社会のリアルという感じがした。『グエムル』の時も思ったが、ポン監督は貧乏人にそんなに簡単に同情とか哀れみを抱いていないと思うし、むしろ抱くことに懐疑さえ持っているように思う。表現者というのは、往々にしてそういうものだと思うが、ポン監督は特にそうした冷めた視線で社会の不条理を見つめている。だからこそ、その感情の読めなさが、突如としてブスリと社会の背中を刺しそうという、気味の悪さにも感じられる。そういう意味で、似たようなテーマである『ジョーカー』や『万引き家族』よりも作品の底にある意地悪さが感じ取られて好きな作品だと思った。