映画と映像とテキストと

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『巴里の屋根の下』を観た。

1930年。ルネ・クレール監督。ああ、映像が切ないというのは、こういうことを言うんだなと思った。歌声が消えていくラストシーン、煙突の見える様々な家の屋根と空。人間のいたたまれないほどの小ささと、その掛け替えのなさ。1930年というトーキーとサイレントの狭間の作品。

 

話の展開の細かいところなどは、大雑把な印象も受けるのだけど、演者のコミカルな演技であまり気にならない。人情喜劇という趣きの豊かさを感じる。床に落ちたパンや花、通りから扉を通して見えるバーの店内、俯瞰で撮る狭い路地、縦に連なるアパートの窓。どれもこれも撮っていることの意図が明確に感じられて、見ていてとても気持ちがいい。人生が変わる人と変わらない人との境界が、切なく優しく切り取られる。面白かった。