映画と映像とテクストと

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『フォードvsフェラーリ』を観た

2020年。ジェームズ・マンゴールド監督。とても面白かった。ある種の古臭さがとても気持ちの良い映画だ。ケンの妻の存在などは、その典型的な要素だろう。フォードとフェラーリの戦いは、何を象徴しているのか?というのは、この映画を批評する上での最もプリミティブな問いになるだろう。個人的には、その戦いの先に何もないという虚しさこそが、この映画を支配するもののように思えた。車で速く走れたからと言って、一体それがなんだというのか。その無意味さこそが、実はヘンリー・フォード2世エンツォ・フェラーリの戦いにも共通するのかもしれない。

 

息子の存在とか、アイアコッカの存在が、なんだか浮いているような気もするが、そういう若干歪な細部も含めて、とても愛せる映画だったように思える。そしてその古臭さも含めて確かに2020年の映画だと言えるのではないだろうか。同監督の『ローガン』にはあまり感心しなかったが、本作はとても良いと思った。