映画と映像とテクストと

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『影の軍隊』を観た

1969年。ジャン=ピエール・メルヴィル監督。レジスタンスを描く映画であり、その生き様や振る舞いの冷酷さが光る作品。そしてその過酷な生き様を強いたナチスや戦争というものの悲惨さが、画面の奥の方から響いてくる。作品の面白さはさることながら、リノ・ヴァンチュラ演じる主人公のキャラクターの魅力も素晴らしい。

 

なんでもないシーンが本当に面白い。レジスタンスという正体を隠しながら、街を歩くことの緊張感が、ビリビリと感じられる。言葉の少なさ、その寡黙さが臨場感となって伝わる。裏切り者を絞殺する時の緊迫感と、そんな非日常が日常との地続きであることが、同時に分かってしまう。平和な時代と大きく異なる行為や思想が満ちているのに、見た目には決して異常ではなく、平時の振る舞いと一見すると違いがないかのような、そういう異常さ。それを異常だとなぜ伝えることができるのかが不思議だ。映画のマジックというものを見せられているという気持ちになる。素晴らしい傑作だった。