映画と映像とテクストと

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『日本のいちばん長い日』を観た

1967年。岡本喜八監督。面白い。長いのに、全く退屈しない。毎年のように見ているが、面白い。なんというか、日本を好きになれる映画じゃないだろうか。そういう意味では『シン・ゴジラ』と似ているし、また批判もされるのだろう。しかし私はこのくらいのユルさが好きだ。それは甘えかもしれないし、正しくないのかもしれないが、それでも「このくらい」が良いなと思ってしまう。これ以上なかなか「正しく」なれない。なりたがっていないというのが正直なところだろう。

 

中盤で「陛下にマイクの前に立っていただくのは驚懼に耐えない」という財務大臣のセリフが出てくる。この感じよね。この感じ。こういうところが面白い。あと玉音盤を1日、どこに保管するか?というくだり。NHKがそれを断るシーンが実にいい。断っておいてホント良かったねと他人事ながら思ってしまう。なんというかここには本当に今の日本と通じる「普通の社会」があるんだなと感じる。

 

若い将校たちの方が狂っている、というのは示唆に富むところがある。彼らより歳を取っているおっさんの方がまともというか、いや、日本をこんな最悪の泥沼状態に導いたのはおっさんたちでもあるのだけど、いざ戦争を止めるとなった時におっさんたちの方が一見まともに見える態度を取るのが面白い。青年将校の方が言葉にすることに躊躇いがないのだろうと思う。言葉にすることで本質がドンドンとクリアになっていき、ドンドン狂っていく。じゃあ、言葉にしないおっさんがマトモかという、彼らは言葉にすることに慎重なだけで、ゆっくりと狂っていっている。その速度の違いにいかほどの意味があるのかよく分からないが、少なくとも根本から狂っている状況において、何が正否を決めるのかといえば、結局はそういうところなのかもしれない。日本の戦後はそういうたまたまの産物なんだろうと思ったりする。