1963年。内田吐夢監督。序盤から実に面白い。花を切り落としたその切断面を見て、石舟斎の力を武蔵が見抜くというワクワク展開で気持ちが昂る。
本作は吉岡清十郎にかなりフォーカスが当たっている点が面白い。名人の子供であり、京都一の道場の主人であり、門弟からは常に大切に扱われつつも、佐々木小次郎からはすぐに大したことがないと見抜かれる。女にも嫌われて、無理矢理手篭めにした女は自殺を図ろうという始末。悩めるエリートが当たり前のように武蔵に敗れ、そこで初めて観客を緊張させるような意地を見せる。負け役の面白み。
しかし3作目まで、シリーズを通してひたすら女への扱いが酷すぎるのが、面白い。武蔵も子供も素浪人も武士も、とにかく女を人間扱いしないという法でもあるのかと思うほどにひどくて、ウケる。