映画と映像とテクストと

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『新・男はつらいよ(4作目)』を観た

1970年。小林俊一監督。面白かった。競馬での大当たりから、ハワイ旅行、泥棒騒動、一家あげての大喧嘩、寅さんの一目惚れ、破局、と結局最後はいつもの寅さんの物語になっていくのだが、前半と後半の繋ぎの部分が非常に見事だと思った。ハワイ旅行騒動で出ていく寅さんが1ヶ月後にとらやに飄々と戻ってくる。ここで戻ってくる理由が物語上は全然ないのだが、ハワイ旅行騒動で「あんなことをした後じゃ、とらやに戻るのは難しいな」という印象が観客側にあるからこそ、この1ヶ月後に全く無反省で戻ってくるという行動が笑いとして納得できるものになっている。前半と後半で、かなりつながりの薄い物語であり、テレビドラマシリーズの時のエピソードを切り貼りしたような物語構成であるのだが、この繋ぎ方は「理由がない」ことが、そのまま見ている側にとって納得感になるという巧みなものだと感じた。今でも全然笑える喜劇だ。

そして、寅さんは許しの物語なのだと改めて感じた。さくらの許しや同情はほとんど神様のような感じさえする。寅さんを見ることで何かを許し、また自分もどこかで許される。この映画が作られた時代に生きたいとは全く思わないが、とても美しい時代でもあるようにも思える。

監督の小林俊一という人は全然知らなかったが、TV畑の人のようだ。田宮二郎版『白い巨塔』などを作っている人とのこと。テレビドラマ版『男はつらいよ』でもプロデューサーや演出をしていたようなので、手慣れたものだったのかもしれないが、実に見ていて安心感のある作品だった。