映画と映像とテクストと

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『5時から7時までのクレオ』を観た

1962年。アニエス・ヴァルダ監督。以前見た『幸福』がかなり衝撃的だったので、いつか代表作と言われるこの『5時から7時までのクレオ』も見たいと思っていた。今回、たまたま見る機会が得られて良かった。

素晴らしい作品だった。死の恐怖から、世界が、他人が、周りの全てがよそよそしいものに感じられる。不安を感じつつも、それが一瞬どうでも良くなるようなショッピングの高揚、不安と忘却、その両者を行きつ戻りつする感情の不安定さが素晴らしかった。特に黒い衣装を着てから、カエルを飲み込む大道芸、そしてカフェのシーンまでの流れが実に美しかった。

終盤のアルジェリアからの帰還兵との会話も面白い。他人の不安を心から共有することは誰もできないのだとしても、人と人とのつながりには、どこか希望がある。ラストの医者による告知のぶっきらぼうさも含めて、こうでしかないものが詰まった映画だった。素晴らしかった。