映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

2019-01-01から1年間の記事一覧

『フレンチコネクション』を観た

1971年。ウィリアム・フリードキン監督。高校生の頃に見た時には、話の筋がちゃんと追えなかった割にはなんか面白かったという印象だった。今回見てみると思いの外、話の筋は追いやすく、分かりやすい話だと思った。なぜ当時あんなに理解できなかったのだろ…

『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』を観た

2019年。まんきゅう監督。ネットでの前評判が異様に高かったが、確かに悪くなかった。作品の芯に「別物は別物。安易に「同じ」としない態度」があり、そこが好みであった。ささきゆうすけさんの以下のツイートが、本作の素晴らしさを的確に語ってくれている…

『穴』を観た

1960年。ジャック ・ベッケル監督。素晴らしい脱獄映画。穴を掘るときの甲高い音が恐ろしい。脱獄の企みを刑務所の中で大声で叫んでいるような怖さがある。脱獄にまつわるサスペンスもとにかく面白いのだが、男たちの友情のエロティックさがたまらない。 配…

『永遠に君を愛す』を観た

2009年。濱口竜介監督。58分の短い作品。濱口映画らしいただならぬ緊張感を感じさせる会話劇が楽しい。新郎新婦も親たちも友人たちも、すべてが虚飾に包まれている中で執り行われる結婚式において、唯一信じられるのは、意外にもこれから夫婦になろうとして…

『牯嶺街少年殺人事件』を観た

1991年。エドワード・ヤン監督。長い映画だが、映画が始まったその最初シーンから、そこに映る画の見事さに惹きつけられる。どのシーンも「こうでしかない」と感じる構図ばかりが出てくることに、本当に奇跡だという感覚を抱き、エドワード・ヤンの凄さにや…

『ジョーカー』を観た。

2019年。トッド・フィリップス監督。なんとも中途半端な映画だった。アメコミの要素を使わなくてもいいんじゃない?とも思うし、別に使ってもいいんだけど、なんというか社会派ドラマとしても実に安直であるように思う。狂気というものを描くのに器質的な問…

『スパイ』を観た

1957年。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督。精神病院が舞台のスパイをモチーフにした映画、と聞けば非常に期待も高まるというものだが、サスペンスや哲学的な問いが推し進められるような作品ではなく、どこかコミカルで、不思議な感触の映画だった。アン…

『ウエスタン』を観た

1968年。セルジオ・レオーネ監督。引き伸ばされたカットに食い入るように見続ける。その若干大げさとも言える緊張感に、共犯関係を結ぶように参加する。アップした顔の造作の猥雑さからも目が離せない。これもまた映画の力なんだと感じずにはいられない。面…

『美少女戦士セーラームーンR』を観た

1993年。幾原邦彦監督。幾原ワールドがちゃんと展開されていて面白かった。短くていい。日本の『キャプテンマーベル』といった作品であった。

『悪魔のような女』を観た

1955年。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督。面白い。もう本当に完璧で、見ることに全てがある。暗がりから明かりのついた部屋を覗き込むことの恐怖が、こんなにも魅力的に映像としてフィルムに焼けることの奇跡。いやぁ、楽しかった。ラストのとんでん返…

『ミラーズ・クロッシング』を観た

1990年。ジョエル・コーエン監督。最初に見た時に、コーエン兄弟作品の中でも、どこか素直に「いい!」と言い切れないような悶々としたものを感じたのだけど、すごく好きだと思う部分もあったりして、自分にとって不思議な立ち位置の映画だった。今回久しぶ…

『劇場版 機動警察パトレイバー』を観た

1988年。押井守監督。どちらかと言えばPart2の方が好きなんだけど、1も良いよね、と思いながら見た。見終わると「やっぱりPart2の方が好きだな」と思った。 帆場暎一というキャラクターのミステリアスさが、あまりしっくりときていない印象を何度見ても自分…

『恐怖の報酬』を観た

1953年。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督。あまりに面白くてびっくりしてしまった。特に前半の主要な登場人物が次々と紹介されていく序盤の面白さに驚いた。なんということはない地味な部分なのに、退屈しない。各シーンが持つ適切感がすごい。特に、昔…

『トゥルーロマンス』を観た。

1993年。トニー・スコット監督。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を見て、久しぶりに本作が見たくなってしまい、鑑賞した。とても馴染みやすく、映画としてのまとまりが良い。破天荒なタランティーノの世界の中では、最も分かりやすく共感…

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観た

2019年。クエンティン・タランティーノ監督。とても良かった。最近のタランティーノ映画はどれもあまりピンとこなくて、でもまあ、それなりには面白いかな?と思う程度だったのだけど、今作はとても良かった。タランティーノの描くおとぎ話としてのファンタ…

『雨月物語』を観た

1953年。溝口健二監督。素晴らしかった。ただ見ることしかできない。そして画の美しさもさることながら、セリフの美しさにも毎回唸ってしまう。着飾ることはないが、その地に足のついたセリフの数々のおかげで、心に余裕を持って安心して見ることができる。 …

『ジュラシックワールド 炎の王国』を観た

2018年。J・A・バヨナ監督。初代『ジュラシックパーク』を映画館で見たとき、少しだけ小馬鹿にしてたスピルバーグに、素直に楽しまされてしまったことに驚いた。初めて画面に巨大草食恐竜(ブラキオサウルス)が出てきた時の感激は今もよく覚えている。あの…

『雨に唄えば』を観た

1952年。ジーン・ケリー&スタンリー・ドーネン監督。どういう話なのか、全く知らないままに見たのだが、力強い単純さが実に心地よかった。ジーン・ケリーの踊りの強靭さには、素人目に見ても魅力的に映る。 どの場面も気合が入っていることがよくわかる。い…

『万引き家族』を観た

2018年。是枝裕和監督。家族の映画、日本社会と貧困の映画、そういうイメージを持っていたので、実際に見てみるとそういう事前のイメージとかなり違うタイプの映画だなと思った。したたかに、しかし物哀しく生きる人間の映画であった。 とても分かりやすい映…

『トイストーリー4』を観た

2019年。ジョシュ・クーリー監督。素晴らしい作品だと思った。『シュガーラッシュ・オンライン』もそうだったけど、過去作に比べて、まとまりのなさはあるんだけど、その発散し続けるスタイルこそが、とても今風だとも思った。 本作で最も素晴らしいと思った…

『ジョン・ウィック チャプター2』を観た

2017年。 チャド・スタエルスキ監督。なんか前作に比べるとものすごくダサい映画になっていた。特に前半の主席の女を殺すまでの流れがとてもモタモタしてて、キアヌの人物像にもキレがないように感じた。中でも誓印の縛りというのが、ちょっと直感的に分から…

『スパイダーマン:スパイダーバース』を観た

2018年。ボブ・ペルシケッテ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン監督作品。傑作。もうみんなが褒めまくってて、これ以上何をかいわんやという感じだが、今回改めて見てみて、本当にあらゆる要素が丁寧で、素晴らしいと思った。 日本の深夜アニメ的な想…

『遊星よりの物体X』を観た

1951年。クリスチャン・ナイビー監督。プロデューサーと脚本はハワード・ホークス。カーペンターの『遊星からの物体X』が大好きで、その元(?)となった本作をいつか見たいとずっと思っていた。見終わった印象としては、なんとも奇妙な肩透かしを食らったよ…

『天気の子』を観た

2019年。新海誠監督作品。もうこの歳になると、新しいことを学んだりすることは難しいだろうし、新海誠はずっと無教養のまま、自分の狭い想像力とともに作品を作っていくのかなと思うと、なんだか気の毒な気もした。でもそれもいいと思うし、何か突き抜けた…

『幸福(しあわせ)』を観た

1964年。アニエス・ヴァルダ監督作品。恐ろしい映画だとは聞いていたが、まったくもって後味の悪いすごい映画だった。何がクソなのか分からなくなるほどに、色んな価値観を揺さぶってくる。初めてヴァルダ作品を見たけど、すごく良かった。 主人公の職場での…

『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』を観た

2019年、ジョン・ワッツ監督作品。面白かった。前作に引き続き、前半の青春モノとしての穏やかな進行がとても良い引きとなって、後半のアメコミ的な展開への気持ちの昂りを高める。ロケーションもコロコロと変わるが散漫な印象はなく、物語の展開も適度にキ…

『寝ても覚めても』を観た

2018年の濱口竜介監督作品。有楽町で見て以来、買ってあったブルーレイをようやく見てみた。劇場で1回目を見た時は、正直、前半があまり楽しめなかったけど、今回は本当に楽しかった。やっぱり好きだなぁとつくづく思いながら見た。 いくつか好きな場面につ…

アニメ映画『聲の形』を観た

2016年。山田尚子監督。『現代アニメ「超」講義』を読み終えたので、気になっていた『聲の形』を観た。 色々あったであろうエピソードをなんとか約2時間にまとめきったのは、素朴にすごいなと思った。さわやかな青春モノだったと思う。 ヒロインの障碍をどの…

『さらざんまい』を見終わった

2019年。幾原邦彦監督。『輪るピングドラム』が好きだったので、見てしまったが、楽しかった。ピングドラムよりも軽い感じで、まとまりも良かった。 幾原作品は派手で過剰さを売りにするビジュアルが特徴だけれど、個人的にはテキストの人だなあという印象を…

『ジャンヌ・ダルク裁判』を観た

1962年、ロベール・ブレッソン監督。ブレッソンの映画を見ると、そして本作でも、ついつい僕は「面白い」という感想を述べてしまうのだけど、やはり、そのあまりに軽薄な「面白い」という感想にどこか罪悪感のようなものも感じる。ボキャブラリーと作品を鑑…