映画と映像とテクストと

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『寝ても覚めても』を観た

2018年の濱口竜介監督作品。有楽町で見て以来、買ってあったブルーレイをようやく見てみた。劇場で1回目を見た時は、正直、前半があまり楽しめなかったけど、今回は本当に楽しかった。やっぱり好きだなぁとつくづく思いながら見た。

 

いくつか好きな場面について。

地震が起こり、劇場から避難するシーン。歩道橋から駅に向かうところで「電車動いてねーぞ。聞けよ!」とクダを巻くニイちゃんと、それに丁寧に話しかける亮平。亮平の人の良さはさることながら、でも、どこか冷静で頭の中は冷めてるようなそんな感じがある。

 

東北へのボランティアから帰宅してきたところのシーン。映画『親密さ』でも同棲相手の男の靴下を彼女が脱がすシーンがある。「くさいー」とか『親密さ』では言ってた気がする。一方で、『寝ても覚めても』では男の亮平が「きたないよー」と遠慮がちに言いながらも、朝子は亮平の靴下を脱がしてあげる。気にし過ぎかもしれないけど微妙なそのエロさと、臭いとか汚さとかにわざわざ言及する繊細さが、なんだかとても気になる。フェチと抑制という感じ。

 

女3人でソファに座って喋るシーン。春代の人柄の良さと美人で優しくて前向きなマヤのそこはかとないウザさが、なんだかとっても良い。濱口映画らしい緊張感のある会話シーンの中の一つでもあると思う。

 

「宝石箱のような」という決まり文句がある。好きな作品をそう例えることがあるが、今回、なぜか強くそう感じ、どのシーンもいいなと思ってしまった。自分のものであるような感覚がとても心地よい映画。