映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『巴里の屋根の下』を観た。

1930年。ルネ・クレール監督。ああ、映像が切ないというのは、こういうことを言うんだなと思った。歌声が消えていくラストシーン、煙突の見える様々な家の屋根と空。人間のいたたまれないほどの小ささと、その掛け替えのなさ。1930年というトーキーとサイレ…

『ドーン・オブ・ザ・デッド(ディレクターズカット版)』を観た

2004年。ザック・スナイダー監督。かの名作『ゾンビ』(1978年)のリメイクを作るというのは、なかなかどうして勇気のいることだろう。ショッピングモールという舞台設定だけが同じで、あとは全く異なる作品になったが、素晴らしいゾンビ映画であると思う。 …

『真昼の決闘』を観た

1952年。フレッド・ジンネマン監督。わずか90分に満たない映画ながら、実に緊張感が漲っていて、見ていて本当に楽しかった。なぜ男は結婚したての日に妻の制止を振り切って、街に残ろうとするのか。その理由を問われ、「よく分からない」とするところが素晴…

『パラサイト 半地下の家族』を観た

2020年。ポン・ジュノ監督。素晴らしかった。面白かった。同監督の他作品では『グエムル』しか観ていなかったし、『グエムル』もそこまでおもろかった印象はなかったので、本作は期待以上に楽しかった。 展開の面白さとテンポの良さなど、作劇に対する評価は…

『グエムル 〜漢江の怪物〜』を観た。

2006年。ポン・ジュノ監督。比較的淡々と物語が進み、そこまで面白い映画ではなかったけれど、時折ハッとするような美しい絵が出てきてドキッとする。特にラストシーンは素晴らしかった。 物語の序盤から怪物の姿全体を画面に晒すところなどはJ.J.エイブラム…

『キング・コング』を観た。

1933年。メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シェードザック監督。2005年の『キング・コング』を見たこともあり、ぜひ1933年版を見たいと思っていたら、たまたまケーブルでやっていて見てしまった。実に面白かった。たった100分でエンパイアステートビル…

『フレンチコネクション2』を観た

1975年。ジョン・フランケンハイマー監督。ドイル刑事の前作の破天荒ぶりが、続編になって弱まったりしているのでは?などという邪推を真正面から覆してくる作品だった。というかさすがにやりすぎではないだろうか。いや、笑ってしまうくらいにめちゃくちゃ…

『墓石と決闘』を観た

1967年。ジョン・スタージェス監督。『OK牧場の決闘』よりもずっと面白かった。ワイアットによる復讐で、どんどんと賞金対象が殺されていき、逮捕できないので、賞金も貰えないという状況になっていくのが、とてもおかしい。協力する奴らみんなが、その事で…

『OK牧場の決闘』を観た

1957年。ジョン・スタージェス監督。つまらなくはない映画だと思うんだけど、なんかあんまり面白くないというか、今ひとつどいつもカッコよくない印象で、どこか散漫としたイメージの映画。 唯一、ドク・ホリデイが、ちょっと味のあるキャラクターのようにも…

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観た

2019年。片渕須直監督。素晴らしい作品だとは思うんだけど、前作の方が良かったなぁと思ってしまった。前作観賞後に原作を読んだときは、随分と思い切って重要エピソードを削ったなと思ったけど、本作(さらにいくつもの)を見たあとだと、余計に前作の翻案…

『終電車』を観た。

1980年。フランソワ・トリュフォー監督。最初に見たときは大学生の頃、だったと思う。その時も面白かったー、と思ったが、今回もまたやっぱり面白いなと思った。また一段と味わい深くなっている気もする。 最高のNTR物語。トリュフォーはその手のテーマが多…

『天国と地獄』を観た

1963年。黒澤明監督。いやぁ、面白い。時折「え?そうなの?」と思うようなところもあるけれど、エンターテインメントとして面白いから許せてしまう。簾越しに見える刑事の眼差しや、誘拐犯のサングラス顔が花に囲まれた中にニュッと出てくるとところなど、…

『キング・コング』を観た

2005年。ピーター・ジャクソン監督。ピーター・ジャクソンえらいなーと思った。『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017年)に比べると50倍くらい面白い。サスペンスとしてもちゃんとしてるし、お話の展開はかなり強引でどうかなってところもあるんだけど、そ…

『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯 特別版』を観た

1973年。サム・ペキンパー監督。既にペキンパーの死後ではあるが、2005年に監督の意思を尊重して再編集されたというバージョン。いやぁ、良かった。サム・ペキンパーの西部劇は、出てくる登場人物の意図が全然読めない行動を取るのが本当に面白い。ずっと黙…

『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇・螺巌篇』を観た。

2008年、2009年。今石洋之監督。なんだかんだ言って面白かった。理屈とかそういうものを超える気合の勝利というコンセプトなわけで、理屈が足りていないことに不満を持つのはおかしいという話はあると思うのだけど、やはりもう少し展開を駆動するための仕掛…

『ウォッチメン (アルティメット・カット版)』を観た

2009年。ザック・スナイダー監督。213分という長さ。しかし面白い。やはり最高だわ。原作もまあもちろん面白いんだけど、映画版は現代的にちゃんとアップデートされていると思う。「共通の敵を作る事で米ソが仲良くなる」というラストの企みも、原作が当時(…

『男はつらいよ フーテンの寅(3作目)』を観た

1970年。森崎東監督。さくらの登場シーンは少ないけれど、どのシーンのさくらも涙をさそう。柴又から立ち去ろうとする寅さんに「もともとはお兄ちゃんの縁談だったんだもんね。良いお嫁さんに出会えるかもって思ったんだよね」と優しく声をかける。そしてラ…

『スターウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』を観た

2019年。J.J.エイブラムス監督。いやいや面白かった。前作のエピソード8が良かっただけに、不安なJ.Jの再登板であったが、良かったと思った。 本作にはとても現代的なためらいを感じて、そこがとても良かった。血統を中心としたスターウォーズサーガに明確な…

『悲しみは空の彼方に』を観た

1959年。ダグラス ・サーク 監督。黒人女性と白人女性がひょんなことから共に暮らす。その半生。人種差別的な問題も当然描かれるわけだが、その描き方が実に現代的に思える。共に生活している白人女性が、黒人女性が築いているコミュニティの存在を全く気づ…

『突撃』を観た

1957年。スタンリー・キューブリック監督。素晴らしい作品だった。戦争映画であり、反戦映画であるが、組織の映画でもあった。主人公は上層部から無茶な作戦を実行することを強要される側であり、かつ部下たちにそれを強要する側でもある。誰か特定の人間が…

『ペンギンハイウェイ』を観た

2018年。石田祐康監督。森見登美彦原作のこういう女性が好きだ映画。森見登美彦映像化作品の中でも好きな方かもしれない。かわいくて、ポップで、ちょっとエッチで、ちょっと衒学的で、ちょっと意味深。雰囲気を浴びるという意味ではとても心地よい映画だっ…

『非情の罠』を観た

1956年。スタンリー・キューブリック監督。ずっと見たかった本作。非情というタイトルほどには暗いサスペンスではなく、ミステリーのような凝ったギミックがあるわけでもなく、しかしなんだか最後まで見続けてしまう力はある作品だった。想像していたような…