映画と映像とテクストと

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『ガン・ファイター』を観た

1961年。ロバート・アルドリッチ監督。めちゃくちゃ面白かった。脚本はダルトン・トランボ。原題は"The last sunset"。主演はカーク・ダグラスに、ロック・ハドソン。あまり前評判を聞くことなく見たのだが、大変に面白かった。人物描写が素晴らしい。カーク・ダグラス演じるオマリーの、カッとなる性格の描写などは本当に見事。また、彼に若い娘がつい惚れてしまうのも、なんか納得させられる。

『赤い河』のような大量の牛を運ぶキャトルドライブのお話で、牛の暴走シーン(スタンピード)が本作にもあるが、『赤い河』の迫力に比べると確かにだいぶ劣るかもしれない。しかしこのこじんまりとしたまとまりこそが、実にいい味となっているようにも思う。そして、いちいちセリフがいい。ロック・ハドソンのセリフの地味さが、妙に詩的な言い回しのカーク・ダグラスの言葉よりも、どこかの時点で、観客による「愛され」が逆転する。それが見事と言うほかない。

そして、ラストのベル(ドロシー・マローン)の告白も、素直に私はおどろいてしまった。「ええ!そうなの?」と。そんなウスノロな私にはそれなりに刺激的な物語だった。

ただ、世間的にはあまり良い作品として評価されているわけではないようで、アルドリッチも雇われ監督だし、トランボの脚本も今ひとつなんて言われていたりするようだ。「いやいや、監督も脚本も最初から最後まで最高におもしろいでしょ」と個人的には思ってしまったが、言われてみると確かに甘いところも多いのかもしれない。しかしメロドラマが大好きな私にとって、とても素敵な映画だった。