映画と映像とテクストと

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『恐怖の報酬〈オリジナル完全版〉』を観た

1977年。ウィリアム・フリードキン監督。面白かった。目が離せなかった。もちろんクルーゾー版の『恐怖の報酬』の方が明らかに出来が良くて、一つの作品としてのまとまりもある。特に人物描写やそれぞれのキャラクターの抱える物語は、フリードキン版は結構饒舌に語っている割には、クルーゾー版よりも響いて来ない。つくづくクルーゾー版はすごい作品だったのだと思う。

 

しかし、やはりこのフリードキン版『恐怖の報酬』も凄い面白い作品だ。モンスター映画的な怖さがある。荒削りで、ささくれ立ったような描写の数々には、どこか惹かれる。例えばパリでのレストランのシーン。色彩といい構図といい、実に見せる画を画面に収めているように思う。荒んだ南米の街の大通りを写す場面で、解体した動物を背負うようにして歩く男、彼の背中には動物の血なのか、真っ赤に濡れた姿が、序盤とラストに映る。これもなんというかつい目を惹かれてしまう。フリードキンという人は、強引にこちらの興味を惹くその手管が、実に裏表がない。決して知的でも論理的でもない感じなんだけど、それが一層誠実というか、こちらに寄り添ってくれるような気持ちになる感じがある。

 

これはこれでいい映画、と思う。