映画と映像とテクストと

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『宮本武蔵 般若坂の決斗』を観た

1962年。内田吐夢監督。蔵に篭った武蔵がいきなり真人間になったかと思ったら、3年間ひたすら待ち続けたお通を捨てて剣の道に生きると言う。なんだか、とんでもない女の振り方をする。しかしお通は健気に武蔵を追おうとする。すべてが狂っていて大変面白い。

 

今作で吉岡清十郎が出てくるが、その道場にやってくる武蔵はヒゲモジャなのに、場面が転換するといつものあの姿。なんで吉岡道場に行った時はあんな姿だったのだろう。

 

本作でストーリーのキモとなるのは槍の宝蔵院。おいしい場面は胤舜ではなく、月形龍之介演じる日観和尚。最後に武蔵が叫ぶ「殺しておいて合掌念仏。嘘だ!違う!違う!違う!敗れて何の兵法があろう!?剣は念仏ではない!命だ!」のセリフはなかなか熱いが、最初聞き取れなくて何を言っているのか分からなかった。原作にはないセリフだそうで、より野卑な宮本武蔵像が、映画では描かれているのかなと思った。悟りきっていない男、というところだろうか。

 

腕を切ったり、首を刎ねたり、血がドビューと吹き出たりと、ラストの決闘の場面はグロくて楽しい。あの残虐さから坊主の念仏という落差。今作も武蔵が強豪剣士に勝つというような場面はない。

 

ところで、本作が公開された年に原作者の吉川英治は死んでいる。