映画と映像とテクストと

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『黄金』を観た

1948年。ジョン・ヒューストン監督。最後まで痛快で、実に楽しい。金を入手した男が、どんどんと狂気に染まっていくわけだが、決してフリークス的な狂気ではなく、日常や常識や合理性と地続きの狂気という感じで描かれるところが良かった。

 

ハンフリー・ボガード演じる主人公のドブズ。彼は最初は物乞いのように金をせびる哀れな貧しい男であり、見ている者にも同情を買うような存在である。にも関わらず、後半、どんどんと欲深くなっていき狂気の人となる。しかしこの人間も、最初は観客も「同類や仲間」と思っていた人間であり、この記憶が観客にラストの悲劇を、自分事として捉えさせるようなところがある。

最後に黄金を手に入れられない結末に至るのに、この爽やかさ。この爽やかさは僅かに感じるドブズと自分に共通して潜む罪悪感を洗い流してくれるものとして、より気持ちよく感じるのかもしれない。名作だった。