映画と映像とテクストと

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『黄色いリボン』を観た

1949年。ジョン・フォード監督。退役を間近に控えた騎兵隊の大尉の、最後のミッションとその苦闘を描く。

宮崎駿の『ルパン三世 カリオストロの城』のラストで、庭師の老人の「なんて気持ちのいい連中だろう」というセリフがある。主人公のルパンたちを言い現したセリフだが、とても素朴でありながら、観客の気持ちを上手く表現した心に残るセリフでもある。本作に出てくる男たちもまさに「気持ちのいい連中」だろう。細かいことにこだわるのではなく、使命と仁義のために命を賭ける。ぶつかり合うのも女を争ってであり、そこに嘘や虚飾がない。アメリカ人の騎兵隊の隊長たちだけでなく、インディアン(ネイティブアメリカン)の老人たちもまた若者たちの血気はやるエネルギーを持て余している。それはどこにでも転がっている、実にありふれた、しかしある年齢になると自然と胸に深く刺さってくる想いだ。

この理想化された世界の気持ちよさには、ほんとうにやられる。前半から中盤にかけて、結構ストーリー的には盛り上がりにかけたまま、淡々と進む印象がある。だからこそか、後半の数々の気持ちよさが、水を吸う布のように染みてくる。

「謝罪は弱さの象徴だ」このセリフのいやらしいこと。これが「間違っていること」を作り手はよくわかっている。わかっていて、あえて主人公に何度も言わせるのだ。これがかわいげなんだと言わんばかりに。しかし、私は好きなんだよな。こういうのが。なんか良いなと思ってしまう。どうも人間が単純になってしまって、ろくでもない。深みがなくなる自分を愛する、そういう魅力が描かれていたと思う。