映画と映像とテクストと

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『かがみの孤城』を観た

2022年。原恵一監督。原監督の映画は、2002年の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』以来だろうか。面白かった。普通といえば普通の映画だと思うが、それでもちゃんと抑制が効いていて楽しめる。原作は未読だが、怒涛の伏線回収がすごい!みたいな作品ではなくて、しかしそのやや淡白なところがドラマ作品としてもなんとなく説得力を増している。『竜とそばかすの姫』という中途半端な児童虐待ものを見た上で本作を見ると「まじめじゃーん」とホッとする。まあ、普通にいい大人が作ったら、最低限、このくらいの描写にはなるだろうと思う。

私はあまり異世界ファンタジーのような児童文学作品を知らないのだが、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』は本当に大好きで、あの作品を超える異世界冒険ファンタジーは生まれないのではないかと勝手に思っている。本作『かがみの孤城』も当然『はてしない物語』を超えることはないのだが(『かがみの孤城』の原作は未読だが、原作もおそらく超えるはずがない)、『はてしない物語』を100点とすると、この作品は59点ぐらいはあるなと思った。エンデのファンからは59点はあげすぎではないか?と怒られるかもしれない。しかし、おそらく辻村深月自身であっても、エンデに比して59点なんてもらいすぎだ、ぐらいに思うと思う、知らんけど。でもそのくらい『かがみの孤城』は良い作品だと思った。

全般的に動きの少ないアニメだったが、なんというか無駄が少ないというか、また、一見無表情っぽいのに、ものすごくベタな表情作りをしているなど、そういうところが逆に原監督の円熟味を感じて良いと感じた。