映画と映像とテクストと

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『ミッドサマー ディレクターズカット版』を観た

2020年。アリ・アスター監督。うーん。なんというか、世代、なんだろうか。一つ下の世代の、うまく腹落ちしない感覚。歳を取ったのかな。前作『ヘレディタリー』は、そうしたモヤモヤを感じつつも「まだ、面白い」と思えたけれど、本作には強い反発心を覚えてしまう。

 

すごく空虚であるように思う。その理由は明確だと思っている。本作の舞台がスウェーデンである理由も、伝統的な祭りである理由もなくて、ただ「ぼんやりとした一般的な印象」というものをひたすら適切に裏切ったり、切り貼りしていく感じがあるからだ。それは巧みであるのかもしれないが、「だからなんなの?」と思わずにもいられない。前半の女性主人公がなんとなく(友人や彼氏の中で)ウザい感じを放ってるところとか、すごく面白いのに、その手のリアリティから意図的に離れていって、ホラーファンタジーの世界に進んでしまう。これが前半と後半が逆の構成なら、多分、自分も納得できたのだと思うが、本作は逆。『ヘレディタリー』もそうだった。アリ・アスター監督にはポン・ジュノと似たような印象があるんだけど、ポン監督はもう少し真面目というか、着地点がリアリティに近いところに落ちる。アリ・アスター監督の開けっ広げの野原のど真ん中に置いておかれる感じが、自分の肌にちょっと合わないというのは、あると思う。