映画と映像とテクストと

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アニメ映画『音楽』を観た

2020年。岩井澤健治監督。原作として大橋裕之の漫画「音楽と漫画」、「音楽 完全版」をベースにしている作品とのこと。正直、最初はあまり期待せずに見始めたのだが、最後まで見終わってとても良い作品を見れたなと嬉しくなった。

どこか愛嬌のある不良たち、簡素な線で描かれた脱力的なキャラクター、少しシュールで、それでいてポップという、なんとも「疑わしさ満載」の雰囲気を漂わせている。しかし、そんな警戒心を持ってしまうような人にこそ、この作品は見てほしい。プリミティブな音楽への感情を、飾るには飾るものの、とても素直に、正直に表現している。若い頃にありがちな音楽への思い入れと、その作品自体の表現方法の素朴さが、不思議な協調をしているように感じる。バカを愛でるインテリというのはとても鼻持ちならないものではあるが、本作にはそういう臭みがあまり感じられない。とはいえ、このどこか危うげな感じがかえって魅力なのだろう。思い込みの美しさが作品の端々に感じられて、とても楽しく見ることができた。もう少し何か欲しいという感じもあるにはあるが、それはそれ、良いと思う。『サイタマノラッパー』のような作品にも感じられるが、結構その行き着く先は違うように思う。