映画と映像とテクストと

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『日本統一1』を観た

2013年。山本芳久監督。なんとなく長寿シリーズということで噂には聞いていたが、なかなか見る機会がなかった。今回、第1話を初めて見た。意外に面白くて、いい意味で驚いた。2022年9月には『日本統一53』がリリースされる予定であり、もはや10年近い老舗ブランドになっている(ちなみに『日本統一52』は2022年7月リリース)。元々がセルビデオを中心としたいわゆるVシネというやつだと思うのだが、劇場版の作品も間に何度か挟んでもいる。

最初、見始めのところでは「かなり緩い作りだな」と思ったのだが、第一話を最後まで見ると、ちゃんと熱くなれるし、妙な納得感もあって、かなり満足感があった。本当に大切なところは「男の熱さと義理と建前」であり、それ以外について力を抜いているというのが明確に伝わってくるので、ユルいところがあってもあまり気にならない。とにかく全般的に感じるのは「好ましさ」とでもいう感覚であり、この背伸びしない感じや意識高い感じを出さない作風が、素敵だと思った。

これまでゆるいゆるいと思っていたゲームの『龍が如く』シリーズも、それなりに凝って作ってるんだな、と思うほど、時には投げやりなところが本作『日本統一1』にはあるのだが、キャラを愛することができれば、ヤクザ映画は観れてしまうというのは思った。というか主人公の氷室と田村が本当によかった。ラストの氷室が男を見せるところも、「この状況、どうすんだよ?」からの、不思議と「収まるところに収まったな」という納得感にまでちゃんと遷移しており、この困難な状況を丸く収めたのも氷室と田村のコンビ芸があってこそと思う(あまり筋の通った物語的な納得感があるわけではないが)。なにより、田村の暴走ぶりを止める役の氷室が、大人しさと強さを観客が気持ちよく同時に享受できる良い塩梅のヒーローヤクザであり、このバランス感が気持ちいい。

Vシネヤクザ映画は、おそらく無数に生まれているのだろうが、こうして長く愛されるシリーズがあるというのが、なんか良いなと思った。