映画と映像とテクストと

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『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』を観た

2015年。レミ・シャイエ監督。祖父の意志をついで、北極点を目指す少女の物語。いやぁ、素晴らしかった。みんなが素晴らしいと言っていた意味がよく分かった。

主人公が危機に陥った時の、リカバリのエピソードが実に良くできている。こんな危機をどうやって回避していくの?とハラハラするわけだが、比較的納得のいく形で解決へと進んでいく。港で無一文になってこれからどうするの?という危機も、船が難破して食糧も枯渇して絶体絶命の危機も、巧みな解決へと向かっている。もちろん完全に納得できるような展開になっているか?とツッコミをしようと思えばできる。ただ、それぞれの解法がちゃんとその後の布石となっていたり(居酒屋での修行は、上流階級のお嬢様に、こんな過酷な旅を続けられるのか?ということへの説得力を増す要素になっている)、これまで描かれた伏線に対する応答(祖父の幻影?凍結した遺体?と偶然的に出会いその場の航海日誌に助けられるのも、主人公と祖父との絆や周りの無理解との落差からギリギリ許せるファンタジーになっている)となり、端正な物語の構成が良いと思った。話全体のまとまりの良さがとても職人的に思えて好ましく思った。上手くいきすぎだろーとは思うものの、それでも爽やかな展開に「これでいいのだ」という気持ちになる。

主人公がやみくもに勇ましいのでも、破天荒でもなく、実に合理的で理性的なところが良かった。