映画と映像とテクストと

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『大空の凱歌』を観た

1957年。ダグラス ・サーク監督。いやぁ、面白かった。もちろん「随分アメリカ人に都合のいい話だな」とかツッコミどころは色々あるのかもしれない。しかし、例えば物語の中で、主人公が誰を守るとか、誰から慰められるとか、誰から説教されるのかとか、誰が真理っぽい話を語るのかとか、その辺りの選択が実に正しいという感じがある。牧師までした人間が、戦争でどう活躍する話を描くのか非常に難しいと思ったが、そういう様々な作劇上の難しさを実に巧みに理屈をつけて回避しつつ、メロドラマとして綺麗にまとめ上げている。こういう巧みさに大変感動してしまう。見事と言う他ない。

朝鮮戦争戦災孤児を助けた英雄を主人公にしており、現役の軍人がこれから始まる映画を紹介するという胡散臭さのあるオープニングから始まるわけだが、やはりサークの説得力によって最後は納得してしまう。ラストの「やっぱり大将が友達なのは最高だ!」というセリフは、軍という組織に対する精一杯の皮肉だと言う見方は、サークに肩入れしすぎだろうか。

ちなみに日本語で主人公ディーン ・ヘスという人物の記事が、あまり見つからなかった中で、下記の新聞記事があった。

朝鮮戦争で千人の孤児救う 米で死去 | 聯合ニュース

事実と映画の違いは、英語版Wikipediaに書かれているが、ヒロイン役の女性のモデルは、実際には主人公のヘスよりも20歳以上年上で、インド(アングロ・インディアン)とのハーフでもなく、爆弾で死んでもいないそうだ。なるほど。

Battle Hymn (film) - Wikipedia

ヘス大佐の優しさを描く場面でややストレスを溜めさせつつ、空中戦の勇ましさや、ラストの輸送部隊が到着する時のカタルシスで上手く浄化させられてしまうのは、悔しいほどに上手いなと思う。