1976年。イングマール・ベルイマン監督。『鏡の中にある如く』よりは私は楽しく見ることができた。若干空回りというか、ん?という所もあるのだけど、それでも中々見せてくれる。ホラー映画的なイメージもとても楽しかった。ベルイマンはなんだかんだ言ってもサービス精神の旺盛な人だなと思う。その分かりやすさには、やはり、ベルイマンでしかない価値がちゃんとあるように思う。
精神科医の女性が、どんどんと狂ってくる、というのはなんとも危うげなテーマであるが、もしかしたら、専門家やプロからすると許せない表現も結構あるのかもしれない。冒頭で「芝居してるのわかってる」とか、あんな物言いを医者が患者にするかな、と思ったりした。ただ、例えば愛と死の統合の詩を「幼稚だ」と言ってみたり、所々、ベルイマンらしい「寸止め」を見せるところは、面白いと思ってしまう。抑圧だと思う祖父母たちの、老いた2人だけの心暖まる関係なども、どこか100%の気持ちで気持ちよくさせないところは、ベルイマンの良さなのだろうと思う。
赤の使い方が印象的だと言われるが、あまりピンとこない感じもあった。棺桶が燃えるところは良かった。トーマスと主人公との会話も面白かった(ちょっと観念的すぎる感じもあるが、まあ、それも含めて)。ところどころ、好きになれるところがあったと思う映画だった。