映画と映像とテクストと

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『バブル』を観た

2022年。荒木哲郎監督。あまりに評判が悪いので逆に興味を惹かれ見てしまった。まあ、そんなに面白くないけど、普通のアニメじゃない?って感じがする。作画の良さというのはあまり分からなかった。背景美術がテカテカキラキラゴツゴツしてたとは思った。しかしまあ、どのキャラクターも本当にベタで、主人公の男の子が、みんなが熱血みたいな行動をしてると「ダサッ」と呟くのだけど、むしろ主人公の言動や振る舞いの方がダサくないか?と、何がどういう基準でこの世界ではダサさの判断がされているのか不安になって、戸惑ってしまう。

監督の『進撃の巨人』を作ってきたキャリアを考えると、スピード感のある空中での動きには確かに躍動感があるのかもしれないが、どういう動きが「良い躍動感」であるのかは、なかなか判断が難しい。例えば『スパイダーバース』の森林での逃亡戦や街中でのスイングの方が遥かにスピード感も展開の豊かさも力強さも感じた。予算など圧倒的な差異があるので単純に比較するのは酷だが、この『バブル』だからこその良さというのがどこにあったのかはよく分からなかった。立体機動装置の動きのようなややフィクショナルな動きや、慣性の法則を無視したような軽い旋回や軌道の変更こそが、独特の面白さだったのだと仮に考えると、『バブル』の方が身体のみを使った身体の持つ厄介さをもう少し表現しないと、立体機動装置のようなデバイスがないだけに、説得力としても面白味としても半端なものになってしまうかもしれない。あの足場になりうるバブルの存在も「あの泡って、あんな弾力あるの?」というのが、意外さも新奇性もどちらもないため、単に納得しにくい不可思議な存在となって世界への没入を妨げている。物語上の様々な設定の粗さや雑さは色々なところで批判を受けているが、個人的にはそういう言葉で表現しうる世界設定よりも、ビジュアルが与える納得させる力というのをあまり感じさせてくれなかったところの方がアニメとしては深刻な問題に思える。

ウタのハミングも鬱陶しい。ウタが最初から最後まで全く魅力的に思えないのもある意味すごい。魂を入れ忘れた人形のようでいて、しかし神秘的な感じもしない。巫女的なるものの貧しい想像力をその身に一身に引き受けていると言う点において、最もテーマに接近しているように思えるのは意図的なのかどうなのか。

アニメ好きはこれでいいんだろ、で作ってみたら、思いのほか色んなアニメ好きから叩かれてしまったという風に外野から見える。多分真面目に作っただろうに、少し制作者が気の毒に思うところもある。これがつまらないって言うなら「他のアニメもたいがいやろ」と思わずにいられない。観客というのは、なかなか気難しくて大変だなと思う。

ヒロインのウタは歌であり、またうたかた(泡沫)のウタでもあるんだろうな。なんかもうヤレヤレって感じがする。言葉のセンスもまたどこか古臭い。