映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

『竜とそばかすの姫』を観た

2021年。細田守監督。非常につまらなかったが、『未来のミライ』よりは楽しく見れた。でも、正直、よく分からない話だった。どうも細田作品に宿る軽さというものが苦手で「なぜそれをそういう軽さで描けるの?」と思ってしまう。母親の死、児童虐待、ネットでの子供の身バレ。別にそういうテーマを軽く描いてはいけないとは思わない。ただ、その軽さで描くのであれば、その軽さでなくてはいけない何かを表現していないのであれば、「あ、この人は単に描けないんだな」みたいに思えてしまう。

ネット空間よりも、明らかに楽しげな高校生活の方が魅力的で、こういうのを描いてれば良いのにと感じた。

ラストの一人で向かわせるところなどに様々な批判があり、確かにわたしもおかしいとは思うのだが、それは小さい問題のようにも思えてしまう。この作品が描きたいことが本気で分からない、というよりも「本気で分かりたい」という気持ちになれない。こんなに下手くそな作劇や凡庸な歌を聞かされて、本気でこの作品の意図や主張というものを知りたい気持ちになれない。この映画を見るくらいであれば、文章で「わたしは○○を大切な価値と思っています」と示してくれた方が良いように思ってしまう。ただ、こうした虚無な映画を見ると、「人生というのは永遠に時間があるわけではない」ということを実感と共に感じられるので、そういう意味では大変にエモい気持ちになれるし、皮肉ではなく、そういうことを感じるためにも、時々虚無的な作品を鑑賞することは悪いことではないと思う。