映画と映像とテクストと

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『漁港の肉子ちゃん』を観た

2021年。渡辺歩監督。前日に見たのが、『さかなのこ』と『竜とそばかすの姫』だったので、色々なものが混ざり合った気持ちになった。本作は、とても素敵な作品だったと思う。主人公の実の母親を死なせたりせず、ちゃんと生きているという設定にしたのは素晴らしいと感じた。どうしようもない人間が生きていること、大なり小なりそんなもんでしょ、という世界が素敵に思える。もちろんそういう世界はそんな綺麗なもんでもないし、快適でもない。実際はそんなクソど田舎になんか住みたくはないのだけど、人が住んでいる場所のすべては、実は田舎なのかもしれないのであり、そういう諦めをとても綺麗に描いていると感じた。欺瞞的なところもあるのかもしれないが、わたしはそれを美しいと感じる。ただ、ラストの焼肉屋の親父の語りはやや口数も多く、過剰であったような気もする。もう少しサッパリとしてても良いと思った。

美人だけど、色気を感じさせない主人公のキャラクターが良かった。ゲームの『ライフ イズ ストレンジ』の時も思ったが、キャピキャピしていない女の子キャラであることのありがたさ。かわいい女子高生がキャンプをしたり、銃を撃ったり、南極に行ったり、そういう作品を見ることの「楽さ」というのはもちろんあるのだけど、本作のような女の子の描き方から感じられる全く別の種類の「楽さ」もある。それはリアルだからどうのこうのというのではなく、実はアニメ的美少女というのは、ある種の緊張感をはらんだもんのであることを逆に示してくれているように思う。インスタやTikTokで自分の可愛さをいかに「自然」に表現できるかを努力している女子高生を見ると、どこか疲れてしまうように、アニメ美少女の「自然」な振る舞いはどこか疲れる。本作の「疲れなさ」はそういう意味で、わたしには新鮮に映った。