映画と映像とテクストと

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『モード家の一夜』を観た

1969年。エリック・ロメール監督。数学教師である主人公は教会で出会った金髪美女を見て、一目で「この女性と結婚する」と確信する。一方で、哲学教師である友人に誘われて、なぜかその友人の女友達モードの家に泊まってしまることになる。主人公は、その2人の女性の間でフワフワと漂う。

ロメールらしいプロットの恋愛劇。男は、妙に慎重であったり、急に積極的になったりする。自分を冷静で理性的な、そして素朴なカトリック信者であり、しかし堅苦しいほどではない現代人として、どこか傲慢でいる。そんな思い込みは、すべてモードには見抜かれ、しかし、そのことをどこか心地いいと思ってしまっているようにも見える。

男が女性にどう甘えるか。その様が滑稽に描かれるのはいつも通りだが、ロメール作品の中でも、なかなかに濃い作品だった。軽妙ながら、どこか漂う緊張感のある会話が面白い。

エリック・ロメールの映画は毎回見終わった後に、「くへへ」と気持ちの悪い笑いが出てしまう。なんかそんな自分もややキモく思って少しだけ反省する。

今作は、会話やプロットの面白さはさることながら、ブックレットにあった画面へのこだわりも楽しい作品だった。どの場面もいい。ジャン・ルイ・トランティニャンの情けなそうな顔と、しかし甘い表情が実に憎たらしい。どの画もおさまるべきものがスッポリとハマっている感じがして楽しかった。ロメールの映画は毎回おんなじ話しかしていない気はするのだが、毎回楽しくて、気持ちの悪い笑いが出てしまう。