映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

『きみの鳥はうたえる』を観た

2018年。三宅唱監督。いや、予想以上に面白かった。男2人に女1人の恋愛劇。ロメールともトリュフォーとも違う、もちろん濱口竜介とも違う、独特の空気感。三宅唱のリアリズムというのが、本当のところ、私自身分かっていない。どうも自分の生きてきた世界観とはちょっと違う気はしていて、例えば『サイタマノラッパー』のような世界観だと、馴染みはないものの、人生のどこかで触れてきた何か体感的なリアルを感じる。しかし三宅唱の映画で描かれる生々しさは、どこか体感として分からない。しかし「そういう世界もあるんだろうな」という感覚だけがある。客観的なリアルというよりも、すごく主観的なリアル。そういう風に世界が見えている人の眼を通して見えている世界という感じがする。

だからなのかよく分からないのだけど、正直、三宅唱の映画の画面は何十分も見続けることが結構辛い。なんかこう我慢して見ている印象がある。こちらが無意識に期待しているところと、微妙に外れたものがやってくる。そういう面白さ。見るものにストイックさを要求するようなキツさがとても良い。これは皮肉とかではなくて、なんか良いのだ。とにかく画面に力があるので見れてしまう。でもちょっと辛い。メンタルにくる内容だから辛いとかではなく、なんかこう画面全体から漂う雰囲気が辛い。目を背けたくなる、というと大袈裟だが。

いずれにしろ、本作は本当にいい映画だった。素晴らしいと思った。