映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

『濱口竜介 ロングインタビュー その軌跡と奇跡』を観た

2022年。日本映画専門チャンネルにて。濱口竜介の語る言葉は、とても明晰だ。秘密を抱えるような言葉を選ばないようにしているというか。そして、適切で、納得のいく絵を撮ることを、規則のルールを守ることのように淡々と語る。そういう言葉には、どこか共感するところがある。

濱口映画ではどうしても気になってしまう、イタリア式本読み。そしてインタビューでも語っていたが、ある程度の力のあるテキストが、残すに足る演技を生み出すという意識。適切なものを積み上げていった結果として、ポロッと最後に適切な作品が生まれ落ちる、インタビューを聞いていて、自分は、そういう製品が生み出される工程を見たような気がした。盆栽の剪定をしていくような手つきというか、決してエモい感じを出さないで制作過程を語る感じが面白い。

棒読みすると、(演技の上手い下手が出にくいから)公平になる、というのも分かりやすくて面白い。そこは、なんというかとても現代的な感覚もあるように思う。人々が気兼ねなく参加することで何かが生まれることへの素朴な期待というか、しかしそれはかなり効率的で、もしかしたら資本主義的であり、もしかしたら濱口竜介自身が影響を受けたというJPOPのような製品にも宿る特徴なのかもしれない。まあ、濱口映画がポピュラーに人気を獲得するとは思えないものの、濱口映画にはすごく捉えやすい「分かりやすさ」があるようにも思う。だからと言って、工場でポコポコと既製品を生み出すように作るわけでは、もちろんない。そういう一見相反するような感覚がいくつかも混ぜこぜになった制作の姿勢のようなものをこのインタビューを見て感じた。