映画と映像とテクストと

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『幌馬車』を観た

1950年。ジョン・フォード監督。いやぁ、最高に素晴らしかった。最後は泣きそうだった。なんだろうな、この良さ。モルモン教徒が約束の地を目指して西に向かう。その幌馬車隊を率いるベン・ジョンソンモルモン教徒、旅芸人、モグリの医者。彼らはみんな嫌われ者たちだ。嫌われるというか疎まれる。そんな人間たちの集まり。主人公のベン・ジョンソンは、何に共感して彼らを助けるのか。街に居られない人たち。弾かれる者の苦しみと矜持。

そして爪弾き者の極みであるならず者たちのクレッグ一味。人を殺し、盗み、暴れる。彼らもまた、街には居られない者たち。旅を通じてどこか心が通じ合う彼らなのだが、最後、クレッグ一味は主人公たちに成敗されてしまう。この現実の悲しみ。本当は最後まで旅をすることができたのかもしれないのに。つまらないプライドと強欲によって、そのつながりは引き裂かれてしまう。

信仰の持つ、どこか清々しいほどの愚かさ。あらゆる人間が同じ地平に立っているかもしれないと思わせる。それはやはりすごいことだと思う。モルモン教徒を率いる長老に、クレッグ一味を殺した主人公は問われる。「人を撃つのか?」そして、主人公は答える。「ヘビだけだ」

あぁ、本当にいい映画だった。フォード作品の中でも、かなり好きな作品かもしれない。参った。