映画と映像とテクストと

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『気狂いピエロ』を観た

1965年。ジャン・リュック・ゴダール監督。高校生の頃に、初めてこの映画を見たとき、かなり鮮烈な印象を受けた。あれから随分と時間が経ったが、あの頃と近い気持ちで見れてしまうところがすごいのかもしれない。

昔よりも、ずっとそれぞれのシーンの意味を素直に受け取れるようになって、それはもちろん年齢というものの成せる技なんだけど、それよりもなによりも、なんというか見ていて楽しくなってしまうこの時間はやはり不思議にも感じる。何が楽しいのか、自分でもよく分かっていないからだ。

破滅することのカッコ悪さ、それがどこかのタイミングでかっこいいような気がしてくる。気のせいなのか、確信なのか、自分でもよく分からない。真似をしたくなる映画、というのは時々あって、それは主役の真似をしたくなることもあれば、映画それ自体を真似したくなるようなこともある。『気狂いピエロ』は、私にとって典型的な映画それ自体を真似たくなる映画だ。別に映画を作ったりしたことも、作るつもりもないのに、そう思ってしまう。気持ちがふわふわとずっとうつろい続ける感じがやはり楽しく、分かりやすい。最後のダイナマイトで、どこか救われる。高校生の時、この映画を見て『地獄の季節』の文庫本を買った。一節も覚えていない。