映画と映像とテクストと

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『THE DEPTH』を観た

2010年。濱口竜介監督。面白かった。随分と若々しい感じがしたけれど、2010年の作品なのね。『PASSION』よりも走ってるような印象があった。ヤクザ、男娼、カメラ、友情、結婚。いろんな分かりやすい要素はあるのだけど、どれも分かりやすく撮られてなくて面白い。濱口竜介らしい、いやらしさがあって、しかしサスペンスとしても面白い。楽しい映画だった。なんか全てがチグハグのような気もするのだけど、そこが魅力とも思えるし、何より面白いから良いのだと思う。

しかしなぜ濱口竜介NTR(寝取られ)にここまでこだわるのだろう。別に「寝」てはない作品も多いかもだが(『寝ても覚めても』とか)、この「恋人が奪われる」ことへの異常なこだわりには気になる感じもある。しかもたいていは奪われるのは男性なのだ。社会の中の男性のありようみたいなものを揺るがすような感じがあって、とてもメッセージ性があるように思える。一方、単純に面白いという感覚も強くて、それでいて他人事のような感覚もある。NTR東日本大震災のような、遠そうでいて、しかしとても身近な問題にも感じる。